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「な、爆弾!?」
身体にダイナマイトをぐるぐる巻きに巻きつけた二舘さんの姿があった。おそらくTNT換算で五〇〇億メガトンは下らないだろう。そんな量の爆弾をどうやって身体に巻きつけているのかとか、どうやって調達したのかとか、意外と着痩せするタイプなんですねみたいな感想はさておき、こんなものが爆発したら地球どころじゃなくて月まで粉々になってしまうんじゃないだろうか。
「もう良いもう良いもう良い! もうどうだって良い! みんなこの星ごと終わらせてやる!」
二舘さんはナメック星を消滅させようとしたフリーザ様のような台詞を叫ぶ。その目は狂気に満ちていた。
「一体、どうしてこんなことに……」
「多分だけど、八重花ちゃんが空気読まなかったからじゃないかなー」
絶句している私の隣で一さんが呑気に欠伸する。
「いやいやいや! じゃあなんですか!? 私は空気読んでまったくタイプでもない人の告白を受けなきゃいけなかったって言うんですか!?」
「でも小説の中のことだし、たぶん実害は無かったと思うよー?」
「酷い! そんなの生贄じゃないですか! なんで普通の女の子の私がアルマゲドンのブルース・ウィルスみたいな目に遭わなきゃいけないんですか!? どう考えても私はリブ・タイラーじゃないですか!? 一さんは酷いです!」
「いや、一番酷いのは二舘さんを隕石呼ばわりしている八重花ちゃんだよねえ?」
冷めた目でそう言って、一さんは嘆息する。というか、どうして一さんはこんなに落ち着いていられるんだろうか。だってこのままじゃ間違いなく全員爆発に巻き込まれてしまうというのに。恐くないのだろうか。
「そりゃそうでしょう。別に恐がる必要なんてないし」
「地の文を読まないでください! というかなんで読めるんですか!」
いや、本当になんで!?
「なんでって……ちゃんとあらすじにも書いてあったでしょう。もしかして、八重花ちゃんはあらすじ読まない派?」
一さんは不思議そうに小首を傾げる。あ、これは完全に馬鹿にしている顔だ。殴りたい。
「お前ら……! 僕の前でイチャイチャしやがって! ピンポイントで隕石落ちろおおお!」
ブチギレた本物の二舘さんは既視感のある暴言を吐いて起爆スイッチに手を掛ける。ポチッとコミカルな音がした。次の瞬間、私たちの身体は閃光に包まれた。
チュッッッッッドオオオオオオーーーーーーーーォォォォン!
強烈な爆発音。そしてその音に飲まれて心も身体も融解した。揺蕩う意識の片隅で、そういえば二舘さんと偽二舘さんが入れ替わっていた理由って結局なんだっけとか、名前に六の付く人が出てこなかったのは本文でカットされたからなんだっけ、なんてことを思ったけどすぐにどうでも良くなった。
その日、神は死んだのだ。
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