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一さんのこういう感の鋭いところがムカつく。というか鋭すぎ。以前、本人はやんわり否定していたけど、一さんは不思議な能力を持っている。
テレパシー。
人の考えていることを直接読む能力。一さんはその力を所有する人間だ。私は一年前に起こった例の『百富町連続失踪事件』の手がかりを追うため、女子大生を装ってこの一言探偵事務所に潜入したのだ。おそらく一さんはあの失踪事件のことを――「ちょっと一回止めようね」
再び一さんが横から口を挟む。
「なんかまたモノローグっぽいこと考えてたよね? いや、超能力の使い手とかじゃないからね僕? あと失踪事件とかも起こってないよね? 百富町すんごい平和な町だから。飼い猫が一日居なくなっただけで大騒ぎになる町だから」
「チッ」
私は舌打ちする。どうしてもこうも一さんは私の考えを読むことができるんだろう。やっぱり探偵という職業柄、観察眼なんかは普通の人より鋭いんだろう。
「いや、多分過分に褒めてくれているであろうところ悪いけど、八重花ちゃんが分かりやすいだけだからね?」
一さんは呆れたようにそう言って嘆息する。それはつまり他の誰でもなく、私のことだから分かると言いたいのだろうか。え? それってつまり一さんは私のことを――「もう大概にしようね」
三度一さんが横から口を挟んでくる。
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