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僕
高一の夏、暗澹たる教室、退屈な授業が僕の心をひどく蝕んでいく。窓の外は青い空がどこまでも広がっていた。
机を並べるクラスメイトは何の疑いもなく黒板の文字をノートに書き留めている。そんなことに何の意味があるのだろうか? 有名大学に入り、一流企業に入社し、瀟洒な家に住まう。そんなことで人の価値が決まるのだろうか?
もう、うんざりだ!
お前らの歩んでいる道は、知らず知らずのうちに権力者によって教唆された道なんだぞ! 大切なものをいつの間にか搾取されているんだぞ!
そんなことに気付く者はこの教室にはいない。
どいつもこいつも苛烈な学歴社会に平伏してやがる。資本主義の奴隷となり、金に心を懐柔されていることに、まだ気付かないのか!
僕が嘆いている今この瞬間も、青い空の向こうで紛争が起きているんだ。独裁者は核をちらつかせ、連合国を無力化する。なんの罪もない子供がまた一人犠牲になっている。人の命をなんだと思っているんだ!
かくゆう僕は、そんな蛮行を指を咥えて見て見ぬフリするしかない。ああ、なんて僕は無力なんだ。憂鬱が胃の腑を満たしてゆく。
僕は何もかもが厭になり、午後の授業を抜け出した。索漠たる思いであてどなく歩く。何かに導かれたように、僕は河川敷に辿り着いた。清濁した水が流れる。穏やかなせせらぎが心地よい。
ふと、陽だまりにある楕円形の小石が目に留まった。僕は小石を手に取り、アンダースローで川に投げ入れる。小石は水面を三段、四段、五段と跳ねていく。
その波紋はまるで笑っているようだった。
僕のことを……。
笑いたければ笑うがいいさ。
ああ、もう死んでしまいたい。
~
と、お爺ちゃんは訪問診療に訪れた医者に向けて言葉を紡いでいる。医者は優しそうな笑みを浮かべ、お爺ちゃんの言葉の節々に頷きながら耳を傾けていた。
お婆ちゃんはその傍らで、うたた寝している。お爺ちゃんの介護で疲れているのだろう。
僕はといえば、そんな光景を笑いもせず、哀しみもせず、ただ冷ややかに傍観しているだけだ。
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