見極められぬ者。

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見極められぬ者。

荷馬車が通れる道を備える山もあるが、それは荷馬車がいける平地や盆地などあまり高低差のない道を隅々まで行ってからにしたいと、ようやく希望らしい希望をサイラーに伝えたバルトロメイは、機嫌よくガタゴトと揺れる荷馬車の御者席で手綱を握っていた。 サイラーたち全員を乗せられるほどの大きさではないので、当然乗員はバルトロメイのみである。 代わりにたっぷり荷物を載せているが、まるで空の荷馬車のようにエンとヤシャは軽々と引っ張っているのだが、サイラーがドファーニ商会の名にかけて用意した大型乗合馬車に乗せられた冒険者たちは呆然と見ていた。 「……サイラーさん」 「ああ?」 「あの……あの少年、何なんですか?」 「少年ってほど幼くもないがなぁ」 「え?」 「確か…冒険者ギルドには19歳って届けが出てた」 「えっ?!」 ギョッとしたように馬車内の冒険者たちはサイラーに視線を集めてから、自分達の後ろから緊張感なく荷馬車の御者台にいる少年──いや、青年らしいバルトロメイをまた一斉に見る。 年齢の割に身体が出来上がっている感じでも、成長が止まり切っているようにも見えず、なおかつ世間知らずにしか見えない純粋そうな顔はまったく精悍な男には見えない。 だいたい十六を過ぎれば成人として扱われるような職業なのだ、『冒険者』とは。 それをさらに越えているはずなのに、纏う雰囲気は子供よりももっと儚く、見たことはないが精霊が人の形に擬態したら彼のように見えるのかもしれない。 「……ほんとに、何者?」 「何者、なんだろうなぁ」 ニヤニヤとサイラーは笑っているが、実際のところサイラー自身もわかってはいない。 ただ兄ができれば手元に置きたいと思ったが、その指の間をすり抜け、しかし繋がりを持っておきたいとわざわざ拠点となる小さな家を用意してやるほど気に入った人間。 どうしてそこまで肩入れするのかと疑問に思ったが、サイラー自身も関わってみれば、浮世離れしたバルトロメイは危なっかしく確かに身近に置いておきたくなるような不思議な少年──いや、青年だった。 だが年齢を知っても何故か『少年』と呼び、そう扱ってしまう。 いっそドワーフの変わり種とでも言いたいところだが、あの種族にありがちな鍛冶屋的才能も、武器や防具に対する執着も見えず、やはり精霊のように掴みどころのない存在だった。
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