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判らぬ者。
人語ではなく神語を話す少年──しかもその少年は人間として生きていくことに必要な常識や規則、知識、学問も、何もかも持たない。
しかし彼が神語を『魔術を発動させるための呪文』ではなく『会話』として単語を繋げていたため、古代王国語と魔術学問を結びつける関連で神語を勉強していた神官──まさしく『短き者』が「あなたは私の師匠となる人でしょうか?」という問いを小難しく言い換えた時、最初に神殿から出てきてバルトメイを訝し気に見ていたその人が彼の『教育係』に任命された。
<汝 名を 名乗るべし>
<我 名を ただ 短き者 と>
「『短き者』?」
「『短き者』って……何だ?いや、何でしょう?」
つい神官らしくなく平常の言葉遣いになってしまうほど、神官が聞き取り訳したその覚書は不思議が溢れていた。
残念ながら『意味不明だから説明しろ』という神語の言い回しがわからず、神にクエスチョンマークを描いても逆に少年にはその線図の意味が伝わらず、とりあえずその問題は棚上げされる。
まだまだ聞かなければならないことは多いのだ。
名も無き少年は精霊と妖精を父母と呼び
名も無き少年は異種さらには獣人族らをきょうだいと呼び
名も無き少年は異種さらには獣人族らにきょうだいとして親しまれる
はじまりの問いかけから2ヶ月かけて、魔術学問神官が繰り返し少年と神語でやりとりし、理解できる言葉で書き直した、まさしく『はじまり』である。
そこから少年は目覚ましく成長────
はせず、まずは袋に穴を開けて首と両手を出し、植物繊維でできた紐で腰を縛ってあるだけの服のような物から、神官見習い用の服を自分で着られるようになるための訓練から始まった。
身につけていた物はその袋改造服のみで、少年は靴や靴下、ズボンはおろか下着すら身につけてはいなかった。
「……よ、良かった……私が教育係で、本当に……」
師匠となった神官が、汚れらしい汚れのない少年の身体を改めながら呟く。
無論、彼にはその意味がわからない。
わからないのをいいことに、良からぬ行動を少年にヤラかしそうな神官が幾人か、脳裏に浮かぶ。
残念ながら文官タイプの自分ではこの子を1人で導くのは困難で、かといって体力と精力が有り余って「若ければ性別などどうでもいい」というような下半身に思考力がありそうな者には預けたくはない。
さて、どうしたものか──
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