長い冬と約束の春

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俺にベッドへ組み敷かれておいて尚、アリィは嬉しそうに笑った。 幸せそうなその顔は、俺に全幅の信頼を寄せている様だった。 どうやら、ようやく、俺の思いはこいつに届いたらしい。 その事実に胸が震える。 力の抜けたアリィの笑顔は、悔しいくらい可愛かった。 俺はずっと、こんな顔が見たかったんだ。 「くそ、可愛いな……」 知らず小さく呟いていた。 兎の耳はこんな小さな声も聞き取れるのか、アリィは頬をほのかに染めて、少し恥ずかしそうに微笑んだ。 可愛い過ぎると、心の底から思う。 しかしだ。この服はどうやって脱がせればいいんだ。 どこをどうやって留めてあるのか、全く見当もつかないようなふりふりとした服を睨んでいると、アリィがおずおずと答えた。 「侍女はその……破いていいと言っていたけど……」 「っ! そんな勿体無い事できるかっ」 「ふふ、だよね。ヴィルならそう言うかなと思ってた」 侍女達は、獅族の殿方なら!! と盛り上がっていたけれど、とアリィは楽しそうに付け足す。 幼い頃の俺なら破っていたかも知れないが、今の俺にはアリィが……国で一番美しくあることを要求されている、そんな女王が着ている服の価値くらい、計算出来ずとも分かる。 アリィはするりと俺の下から抜け出すと、器用にそれを脱いでみせた。 小さな細い手が一つ一つリボンを解いて、留め具を外してゆく様は、どこか背徳的で、俺はごくりと唾を飲み込んだ。 下着に手をかけたアリィが、俺を見上げる。 「全部……脱いだ方がいい?」 「……っ、それは、俺がするからいい」 なんとかそう告げると、アリィはどこかホッとした様子で小さく笑った。 「うん」 まだ、きっと怖いのだろう。 俺にそれを見られる事が。 それでも、それを隠して俺に体を預けようとしている。 それはヴィルにとって堪らない喜びだった。 アリィをもっと、自由にしたい。 アリィの心を、もっと色々なものから解き放ってやりたかった。 せめて、俺の前でだけは……。 そう願いながら、アリィの肢体へと指を伸ばす。 そっと触れると、アリィは小さく肩を震わせた。 俺より薄い体毛をかき分けて、舌先を這わせる。 鍵状の突起は、舌の中央だけに生えている。 そこで触れてしまうと、きっとアリィの薄い肌は裂けてしまうだろう。 俺は舌の先端だけで、丹念にその肌を舐め上げた。 「……っ、ん……」 わずかに漏れたアリィの声に、俺の背筋がぞくりと甘く疼く。 (くそ……可愛い声で……っ) 息が上がりそうになるのをなんとか堪えながら、その薄い胸から、脇腹を通り、その下を目指す。 早くそこへ辿り着きたい。 逸る気持ちを力尽くで押さえつける俺に、アリィが甘い声で鳴いた。 「あっ……ぅんん……っ」 もうダメだ。 限界だ。 俺は顔を上げると、アリィの下着に手をかける。 アリィは真っ赤に染めた顔で、潤んだ瞳で、それでも俺に頷いた。 爪を立てないよう、慎重にそれを下ろすと、そこには確かに、何も無かった。 去勢されたのか……。 やはり、とは思ったが、それ以上に思う事はなかった。 視線を感じて顔を上げる。 淡い薄紫の、不安そうな瞳。 その瞼にそっと口付けて「やっぱり、お前は綺麗だ」と囁くと、アリィはその慎ましやかな口の端をじわりと綻ばせて、小さな涙を一粒零して、笑った。 ああ、ダメだ、可愛過ぎる。 俺の服の中に仕舞ったままの下半身は、もう痛いほどに立ち上がっている。 この隙に全てを脱ぎ捨てると、解放感に息が漏れた。 ふぅ。と思わず息を吐いたところを、アリィに『ちゅ』と鼻先へ口付けられて、俺は不意打ちに一瞬固まった。 アリィは少し恥ずかしそうにしながらも、花のようにふわりと微笑んだ。
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