長い冬と約束の春

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ヴィルは、アリィの細い体を抱えると、くるりとうつ伏せにする。 小さな背に覆い被さるようにしながら、その窪みへと慎重に指を這わせた。 びくりと小さく肩を揺らすアリィを宥めるように、ヴィルはアリィの首元に鼻先を埋める。 長いサラサラの髪が、ヴィルの髭をくすぐった。 「お前は、甘い匂いがするな」 言って、そっと首の裏を舐めながらも、ヴィルはその細い首に齧り付きたい衝動を必死で堪えていた。 獅子同士なら、こんな時に首裏や肩のあたりを噛むのは自然な行為だったが、それをアリィにしてしまうわけにはいかない。 ヴィルの牙は、きっと容易くその肌に穴を開けてしまうだろう。 発情し始めたアリィの甘い香りに、ヴィルの口端からぽたぽたと雫が零れる。 目眩がしそうなほどの欲を堪えながら、ヴィルはその雫で自身の指先を濡らすと、アリィの中へと挿し入れた。 「んっ……」 小さく、くぐもった声。 「痛かったら、我慢、するな。いつでも言え」 荒い息の合間に、ヴィルが心添える。 「う、ん……大丈、夫……」 その言葉通り、小さな穴はヴィルが思ったよりもすんなりと、それを受け入れた。 焦るな、と自分自身に繰り返し唱えつつも、ヴィルはそこへ二本目をあてがう。 ヴィルの指は一本で、アリィの指三本分程の太さがあった。 ゆっくりと二本の指を沈めてゆく。 「は……ぁ……、っ、ん……っ、ぅ、く……」 アリィの声に余裕が無くなりつつあるのが、ヴィルにも分かった。 半分ほど進めたその指を止め、抜こうかどうか迷っていると、アリィが震える声で告げた。 「……大丈夫……」 アリィの体は、結婚が決まってからというもの、この日のために長い冬の間じっくり慣らされていた。彼のそれを、受け入れられるように。 何といっても、国に一人しかいない女王の体だ。 立てないほどに壊されてしまっては困るのだろう。 けれど、それをそのまま彼に告げるのは、流石に躊躇われた。 「ね……入れて……? 大丈夫、だから……」 アリィは上がりつつある息の合間から、そうねだった。 ヴィルは、知らず口内に溜まっていた唾液を飲み干す。 ごくりと喉が鳴り、指はさらに深くアリィの中へと侵入した。 「ぁ、ぅ、んん――っ」 アリィが声を殺したのが分かって、ヴィルは思わず指を引き抜いた。 「んっ。ぅ……」 びくりと揺れた細い肩へ、ヴィルは慰めるように唇を寄せる。 チラリと横目で引き抜いた指を確認する。 赤いものが付いていない事に、ヴィルは心底ホッとした。 アリィに触れたい。 できることなら、一つになりたい。 けれどヴィルは、アリィを決して傷付けたくなかった。 動きを止めてしまった獅子を、小さな兎は肩越しにそっと見上げた。 その黒目がちになっている瞳には、戸惑いと不安が浮かんでいた。 グルル……と時折彼の喉の奥で欲望が鳴る。それでもヴィルはアリィに牙を立てなかった。 異種婚は少ないとはいえ、この国では禁止事項ではなかったし、国民の中には狐族や鼬族の者もいる。 草食と肉食の組み合わせでは、草食側が血を見ることがある事くらい、皆口に出さずとも分かっていた。 だからこそ、国民の皆は私の無事を祈って、出来る限りで祝ってくれたのだと、アリィは思っていた。 「……ねぇ、ヴィル。私を齧っても、いいんだよ?」 言われて、ヴィルは大きく肩を揺らした。 「な……に、言って……」 ヴィルの掠れた声は、喉に張り付いたように途切れた。 アリィは、ヴィルになら、少しくらい齧られたって、正直構わなかった。 彼の一部になれるのなら、それは何て魅力的なのだろうと、心の隅で思う。 この国のためを思えば、あまり齧られるわけにもいかないけれど。 「服で隠れるところなら、大丈夫だよ」 「っ……、俺は、嫌だ……」 苦しげにヴィルは顔を背けた。 けれど本能は、その柔らかそうな首元に、思う存分牙を立てたいと叫んでいる。 アリィはまるで駄々をこねる子に困ってしまったような、そんな柔らかい苦笑を浮かべると、腰を高く上げて、彼を誘う。 「じゃあ、せめて、ここだけは、ヴィルの好きにして?」 甘くねだるような声に、ヴィルの理性はチリチリと焼け付く。 「……っ、泣いても、知らねぇからなっ」 アリィは、彼の精一杯の強がりに、内心苦笑しながら甘く囁いた。 「ヴィルにだったら、いいよ。……来て……」 ヴィルはその言葉を聞いた途端、頭が熱く煮え滾った。 目の前に差し出されたアリィの細い腰を両手で掴むと、そこへ自身を突き立てる。 「あっ、はっ、あああぁぁぁあああっ!!」 悲痛な声に、ハッとヴィルが気付いた時には、それはアリィを貫いていた。 慌てて抜こうとするヴィルを、アリィが止める。 「抜かな……で……っ、しばらく、この、まま……っ」 アリィから痛みが遠のくのを待つ間、ヴィルは詫びるかのようにせっせとアリィの背や肩を舐めた。 「ふ、ぁ……、っ……、も、大丈夫、だよ……動いて……」 アリィの甘い声に、ヴィルが驚いたように目を開く。 動いても、いい……? それは、俺がこのまま腰を振っても良いと言うことなのか……? ヴィルは戸惑いながらも、ゆっくりとそれを揺らしてみる。 それだけで、追い詰められたのは自分の方だった。 食いしばった歯の奥で、グルルと喉が鳴る。 アリィの中は、温かく、最高に柔らかかった。 じわじわと動かすほどに、アリィの内は滑らかにヴィルを包み込む。 「あ……ん……っ、あっ……」 アリィの声から、徐々に力が抜け、甘く艶っぽい響きに変わる。 水音が絶え間なく響く頃には、愛らしい嬌声が次々と零れた。 「あっ、あんっ、や……ぁ……あぁあんっ」 「あまり、可愛い声で鳴かないでくれ、俺が先に参ってしまう」 ヴィルが情けない事を本気で言うので、アリィは小さく笑いながら囁いた。 「きて、いいの、に……んんっ」 「そういうわけに、いくか、初夜、なんだ、ぞ……っ」 妻よりも繊細なことを気にしている夫に、アリィは内心苦笑しつつ告げる。 「何回でも、して?」 その言葉に、ヴィルのものが一層硬くなったのを、アリィは体で感じた。 「っ……、後悔、するなよっ」 言葉とともに、速度が上がる。 「んっ、あっ、あぁっ。ぁああん、あっ、あああっ」 アリィは返事もできないまま、激しく揺さ振られた。 ヴィルに突かれる度、ジンジンとした甘い熱がアリィの中にいくつもいくつも溜まってゆく。 幸せだと、思った。 じわりとアリィの目の端に涙が浮かぶ。 それが生理的なものなのか、感情からくるものなのか分からないうちに、アリィの内側でヴィルのそれがもう一回り大きくなった。 みちみちと音が聞こえそうなほどに、アリィのナカは限界まで広げられる。 「あっ、ぁああぁんんっっ、おおき、い、よ……ぅ、んんんっっっ」 「……っ、イくぞ」 ヴィルの声は、グルルという唸りとともに低く響いた。 アリィの心と体が期待に跳ねる。 「ぁ……、来て……、っあんっ、私の、ナカ……いっぱい……っ!」 「っ、くそ……可愛い、こと言っ……っっ!!」 ヴィルは眉間の皺を深々と刻むと、一際奥まで貫いて、動きを止めた。 どくりと、彼のそれが大きく脈を打つのがアリィには分かった。 「あ……、あっ、ああああああああああああんんんんんんっっっ!!!」 彼に愛を注がれて、アリィの心と体は溢れる喜びに震える。 ヴィルの熱い愛は火傷しそうなほどに熱をもって、アリィの中へと広がる。 「ふ、あ……熱、い……っ、ぅんんん、ぁぁあ……ぁぁ……」 うっとりと細めた薄紫の瞳から、またホロリと零れた涙が、シーツに染み込んだ。 ヴィルは名残惜しそうにゆっくり腰を何度か揺らしてから、そっと自身を抜き取る。 「アリィ……大丈夫か……?」 若干申し訳なさそうな響きで、ヴィルは尋ねた。 顔を見たかったが、アリィは枕に顔を埋めてしまっていて様子が分からない。 アリィはまだ荒い息を整えるのに精一杯のようだ。 ヴィルを受け入れていたアリィのそこは、細い体に見合わないほどに大きく穿たれたままだった。 すぐにはとても塞がらないのだろう。 ヒクヒクと震えるそこからは、彼の注いだものがどろりと溢れ出している。 ヴィルが、慰めるように、そこを柔らかな肉球で撫でると、細い肩が揺れた。 「ひぁ」 驚きの混ざった悲鳴が可愛らしくて、ヴィルはやはり、その顔を見たいと思った。 「アリィ、顔を見せてくれ」 懇願するように囁くと、薄桃色の兎はほんの数瞬躊躇った後、仕方なさそうに、ころりと横向けに寝転んだ。 小さな手でこしこしと擦る小さな頬には、いくつも涙が零れている。 アリィの照れ臭そうなその表情が愛しくて、ヴィルはその小さな鼻先に、額に、頬に、柔らかく口付けを降らせた。 「ん……」 アリィの眉は、恥ずかしさからきゅっと寄せられていたが、口付けを繰り返される度、ゆっくりと蕩けるように表情を崩す。 「ぅ……」 ヴィルにはそれがまた、たまらなく愛しかった。 アリィの顔にかかる乱れた長い髪を、ヴィルが指先で優しくすくう。 その繊細な触れ方に、アリィは長い睫毛を揺らして尋ねた。 「……少しは落ち着いた?」 問われて、ヴィルが苦笑を浮かべる。 「ああ」 ヴィルは長い舌でベロリとアリィの頬を逆撫ですると、耳元で囁く。 「少しだけ、な」 まだ終わりではないと伝えられて、アリィの背筋がぞくりと震える。 「……っ」 薄紫の潤んだ瞳に期待を浮かべて見上げられ、ヴィルもまた煽られた。 思ったよりもずっと積極的なアリィの態度に、ヴィルはようやく気付く。 あの時アリィが怖がっていたのは、行為そのものではなく、俺に嫌われるかも知れないことだったのだと。 そうと分かった途端、ヴィルに重くのしかかっていた罪悪感はふわりと霧散する。 改めて見れば、その薄桃色の兎は、小さな体に溢れるほどの愛を注がれてなお、まだ俺を求めていた。 桃色よりも赤く染まった頬で、薄紫の瞳を滲ませて、じっとヴィルを見つめ、それを待ち望んでいるその姿に、胸が震える。 一度引いたはずの熱が、また獅子の下半身へと集まる。 「アリィ……」 その名を呼んで、口付ける。 アリィはそれに応えるように、小さな舌で懸命に彼の唇を舐めた。 小さくて柔らかな舌が、くすぐったくて、胸が苦しい。 「愛してる……」 アリィの口の中でそっと囁くと「ん……」と小さく頷かれた。 いっぱいになった胸を抱えて、ヴィルはもう一度、自身のそれをアリィのそこへとあてがう。 一度も触れないままに、それは既に十分な強度を取り戻していた。 唇を離すと、二人の視線は重なった。 いいか? と視線で問うと、アリィはほんの少し照れた顔でコクリと頷く。 愛する人に受け入れてもらえる喜びに、ヴィルはそっと息を詰めた。 つぷ。と小さな音を立てて、ヴィルはもう一度その内部へと侵入する。 「んぅ……っ」 同時に漏れる、小さな声。 ジリジリとそれを進めると、アリィの細い眉は苦しげに寄せられた。 「……痛くないか?」 「ん……っ、ぅ……、っ、大、丈夫……っ」 時々びくりと肩を揺らしながら、アリィがそっと息を吐く。 震えるその細い肩へ、ヴィルは口付ける。 さっきは初めてだったので、ヴィルは基本に忠実に、後ろから事を成した。 そのつもりでいたのだが、もしかしたら、自分はアリィの顔を見るのが、ただ怖かっただけなのかも知れない。 チラリと横目で見るその表情は、どう見ても痛みを堪えているようで、心が痛んだ。 けれどそれとは裏腹に、アリィの熱い内側に飲み込まれた部分は、もっと奥へと訴えている。 ヴィルがギリッと奥歯を噛み締めた音に、アリィの長い耳はピンと跳ねた。 「平、気……だよ、……もっと、奥まで……来て……?」 はぁはぁと漏れる息の合間からねだられて、ヴィルはアリィの瞳を覗き込む。 熱っぽく潤んだ淡い紫の瞳を見つめたまま、ヴィルは求められる通りに細い体を貫いた。 「ぅ、あっ、ああっっ、ん……っ」 細い首がわずかに逸らされて、美しい瞳から、小さな涙がぽろりと溢れる。 ヴィルはそれを慌てて舐めた。 アリィの細い腹部は、ヴィルのモノがはっきりそれとわかるほどに盛り上がっている。 さっきも、こんな風になっていたのか……。と、ヴィルは驚きとともにそれを許された喜びが背を駆け上るのを感じた。 逸らされた細い喉を舐める。 舌越しに震える息遣いが伝わって、その喉へ牙を立てたいという激しい欲求がヴィルを襲った。 「っ……」 グルルと唸り声を漏らしながらも、ヴィルが顔を上げてブンブンと頭を振る様に、アリィは苦笑した。 そんな優しい彼が、せめて苦しまないように、と、アリィはヴィルの視線を誘う。 「ね、見て……。ヴィルの、ここまで、入ってる、よ……?」 アリィは自分の腹にくっきりと浮かんだヴィルのラインをなぞると、細い指で先端をトントンと叩いた。 甘い刺激が、ヴィルを襲う。 びくりとヴィルが腰を引くと、アリィの形もそれに合わせて変わる。 「んんっ」 アリィの甘い声。それよりもずっと甘い香りが、アリィから漂って、部屋中に広がる。 ヴィルがそうっと腰を寄せると、アリィの奥へとそれが進むのが、はっきり目に見えた。 「あぁん……っ」 アリィの零す声が甘く切なげで、ヴィルの喉の奥が知らずに音を立てる。 ゆるゆると動かせば、愛らしい嬌声が止めどなく溢れ出した。 「う、あっ、あ、あっっ、ああんっ、んんん、ぅああんんっっ」 ヴィルはそんな声に翻弄されながらも、丹念にアリィの中を探った。 「あっ!!」 びくり。と細い肩が跳ねる。 アリィの大きく見開かれた目が、驚きと戸惑いを映していて、ヴィルはそこだと分かった。 思ったよりも浅いその場所を、逃さないように何度も突く。 「あっ! やっ、んっ! あぁっっっ!!」 アリィはそこを刺激される度に、ビクビクと跳ねた。 感じた事のない快感に、薄紫の瞳に戸惑いが滲む。 「あぁんっ、ま、待って……、っ、なん、か……ああっ!!」 アリィは、ぎゅっとヴィルの腕にしがみ付いた。 ヴィルは動きを止めると低く囁く。 「どうした……?」 アリィは、長い睫毛をふるふると伏せて、真っ赤な顔で答える。 「わ、分かんない、の……」 ゆっくり瞬いた薄紫の瞳から、溜まっていた涙がポロリと零れる。 「ん? 何が……?」 尋ねるヴィルの声は、どこか楽しげだった。 「気持ち、良過ぎて……。どうにか、なってしまいそうで……」 不安げに、それでも素直に答えるアリィが愛しくて、ヴィルはもう一度、そこを突いた。 「ゃぁあんっ!」 不意を突かれて、びくりと、アリィが腰を浮かせる。 その仕草に誘われるように、ヴィルはまた腰を揺らす。 「あぁん! や、あっ、あぁぁんんっ! そこ……ダメ……あぁん! や、だ、ぁぁあっっ!!」 繰り返し与えられる強烈な刺激に、アリィは涙を零して喘ぐ。 隠し切れない不安を滲ませるその姿に、ヴィルはもう一度動きを止めて尋ねた。 「もしかして、お前、イった事ないのか?」 ヴィルを見上げるアリィは一瞬不思議そうな顔をして、それから少し悲しみを纏って答えた。 「だって……、もう、無いから……」 どうやら、アリィはそれが無ければ至る事はないと思っているようだ。 ヴィルは理解した。 アリィがそれを知らない事を。 ヴィルよりもずっと博識なアリィだったが、流石に国が誇る聖女様だけあってか、こういった知識は持ち合わせていないらしい。 初めてアリィに先手を打てたようで、ヴィルの心が躍る。 ニヤリと知らず上がったヴィルの口角に、アリィが戸惑いの視線を向ける。 「……ヴィル……?」 「心配しなくていい、俺が教えてやる」 「……え……? ……何を……」 白い獅子は笑みを浮かべたまま、大きな舌でベロリとアリィの薄い胸を下から上へと舐め上げる。 「んぅ、っ」 敏感になっていたその先端に触れて、アリィがびくりと涙目で身を捩った。 その仕草に、ヴィルは思わず溢れそうになる唾液をごくりと飲んだ。 思ったよりも感度の良さそうな胸の突起を、ヴィルは舌先でもてあそびつつ、腰を揺らす。 正確に、アリィの一番弱いところを狙って。 「ぁああぁんんっっ!! や、あっ、そこ、は……あぁぁあっ!」 緩やかに揺らす度、アリィの体の内側が、蕩けてぐずぐずになってゆく。 ヴィルはそれを感じながらも、あえて奥を突かずにそこに留まった。 「や、だ、そこばっか、り……ぃいっ、あぁあああんんんっっ!!」 アリィの声から、追い詰められつつある事がわかる。 「だめ……っ、あぁあっ!! だめ、だよ……や、あ、やだぁっ! お……、おかしく、なっちゃ、ぅううんんんんんっ!!」 びくりと激しく腰が跳ねると、アリィはぎゅっときつく目を閉じる。 途端、アリィの内側がぎゅうぎゅうとヴィルを締め付け始めた。 「んんんっ! んんんんんんんんんんんっ!!」 アリィの腰がガクガクと揺れる。無意識なのだろうか。それがまた可愛らしいと思いつつも、温かなそこで優しく締め上げられて、ヴィルもまた追い詰められた。 初めて達するアリィの表情から目を逸らさないまま、ヴィルも自身を一気に奥へと突き立てる。 「ぁあああああっ!!」 ずくずくと奥を突くと、アリィは飲み込みきれなかった雫を口端からこぼしながら喘いだ。 「や、あ、ぁぁあっ! ヴィル、激し、ぃ……ぁああぁんんっっ!!」 まだ締め付け続けているそこを、無理矢理奥へと分け入って、繰り返し繰り返し犯すと、アリィの細い体は何度も跳ねた。 「ああん、だめ、また……っ! あっ、きちゃ、う……、んんっ! きちゃう、よぉっ!!」 それが何かも分からないままに、寄せては返す快楽の波に翻弄されるアリィを、ヴィルはただ愛しく抱き締める。 「あ、やだ、くる、ぁ、くるっ!! ぅぅんんんんんんんんっっっっぁ、ああああああああああああんんんっっっ!!」 ぎゅうっと目を閉じて身を縮めるアリィが、それでも堪えきれなかったらしい快感に仰け反り震える。 アリィの荒い呼吸に震える細い喉が、惜しげもなくヴィルの前に晒された。 今にも達しそうだったヴィルには、決定的に理性が不足していた。 目の前に差し出されたそれへと、彼は反射的に牙を下ろす。 その薄く柔らかそうな喉へと、牙が突き立つ。 と、思われた瞬間、バチッと弾けるような音がして、ヴィルはその頭を大きく揺らした。 白い毛に覆われた鼻先に、じわりと赤い筋が浮かぶ。 真っ赤な血に染まるはずだった兎は、まだそれに気付かないまま、終わらない快感に喘いでいた。 耳慣れない音に、持ち上がった薄桃色の耳だけが、事態を把握しようとしていたが、まだ心も体も深い快楽の海の底にある。 ヴィルは眉を顰めつつ、自身の鼻先を二、三度撫でさするが、ブンブンと頭を振って、またアリィに向き直った。 心の中で、部屋に潜むクレアへの感謝を告げながら。 世話にはなるまい。と、己の欲くらい、自身で律してみせると覚悟していたのに、なんてザマだ。 己のていたらくを自責しつつも、それをアリィに悟られずに済んだことに、何より、アリィを傷付けずに済んだことにホッとする。 「……ヴィル……?」 時折、寄せる波に痙攣する体を抱えながらも、アリィは黙ってしまったヴィルを気遣った。 アリィの内側で、彼が力を失いかけるのが分かった。 「いや、何でもない」 ヴィルはなるべく優しく微笑むと、心配そうに伸ばされたその手に口付けた。 「ごめん……私ばかり、その……」 「無くてもイけるって、分かったか?」 悪戯っぽい瞳で返されて、アリィは恥ずかしそうに頷いた。 そんな姿をヴィルはまた愛しく思う。 申し訳なさそうに、もう一度「ごめん」と謝るアリィに、ヴィルは柔らかく首を振った。 「謝る必要なんか無い。アリィが悦んでくれると、俺は凄く嬉しい」 真っ直ぐな言葉に、桃色の兎は幸せそうに微笑んだ。 「ふふ、ありがとう……」 その笑みに、ヴィルのそれがじわりと力を取り戻す。 アリィは小さく肩を揺らし、それをとても嬉しく感じた。 「もう少し、頑張れるか?」 「うん。ヴィルとだったら、いくらでも」 答えてアリィが微笑むと、甘い香りが一層強くなる。 それは本来、排卵時に漂う匂いのはずだった。 アリィは精巣を取られていたが、かといって卵巣は持ち合わせていない。 それがまさか、こんな香りを漂わせるとは、誰一人思っていなかった。
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