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一人前の勇者になるために。
「お師匠様!」
僕のお師匠様が、長い長いドラゴン討伐のミッションからやっと帰ってきた。
勇者見習いとして一人、訓練場で鍛錬を続けてきた僕。今日こそは、とお師匠様に声をかける。
「僕、いい加減見習いを卒業して、立派な勇者になりたいです!どうすれば、お師匠様みたいな勇者になれるんですか?」
「おお、ジュン。そうか、お前本気で、いっちょまえの勇者になりたいのか」
「ええ、そうです!」
この世界での勇者とは。未踏の大地に踏み込んで貴重な資源を持ち帰ったり。魔王率いる魔族と戦ったり。町を脅かす、恐ろしいモンスター達とも勇敢に戦い、それらの仕事をこなすことによって国や企業からギルドを仲介してお金を貰う仕事を言う。
幼い頃からずっと、僕はお師匠様のような立派な勇者に憧れてきた。五歳から鍛錬を続けて早十年、僕ももう十五歳だ。そろそろ、勇者として認定を受け、旅立ってもいいはずである。
ずっとお師匠様には卒業試験をしてくれとお願いし続けているのに、のらりくらりと躱されてしまって聞き入れて貰えなかったのだ。今日こそは、と僕はお師匠様に迫っているというわけだ。
「……そうだな、そろそろ潮時か。じゃあ、立派な勇者としてやっていくため、必要な心得をお前に言い渡そう。それが、そのまま最終試験の内容になるからな」
「はい!」
お師匠様の言葉に、僕は背筋をぴんと伸ばして椅子に座った。そして。
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