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「チャーハンと餃子セットになります」
店員はメガネの前にそのセットを置いた。他の3人にはラーメンが運ばれてくる。
「すすり方がどうとか言ってたのに、自分は頼んでないのか」
「もしかして、うまくすすれないのをごまかしてたのか」
男2人がメガネをからかった。そんなことはない、と言い張る顔は真っ赤になる。すると、女の子が空いている小皿に麺とスープを一口分入れた。
「どっちでもいいじゃん。美味しく食べられれば」
メガネは女の子から小皿を受け取る。箸で麺をつまむと口に含み、恐る恐るすすり始めた。途中、むせながらも一口食べる様子を見て、女の子は微笑む。
「お兄さん、来てますよ」
肩を叩かれたと思ったら、例の彼女が僕を見ていた。慌てて視線を正面に戻すと注文していた肉入りのラーメンが来ている。僕はまず、スープを一口飲んだ。豚骨の中にある砂糖じょうゆの甘みが食欲をそそる。ご飯が欲しい、そんな一品だ。ふと、彼女が気づかせてくれたこと思い出す。僕、お礼言ってない。
「あの、教えてくれてありがとうございます」
礼を言ったときも彼女は豪快に、しかし幸せそうにラーメンを食べていた。いつの間にか周りからも、麺をすする音がしている。
「いえいえ。それよりも早く食べましょ」
彼女の笑顔でこれから食べるはずの心が満たされていく。そして、麺を持ち上げすすっていった。
ずぞぞ ずる ずぞぞぞ
おわり
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