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わたしの日常
とてもステキな夢をみました。
キレイな花、カワイイ花がたくさんの花畑。
その中におとぎ話の中に出てくるみたいな小さくてカワイイお家があるんです。
入口のドアを開けると、すぐ目の前に大きなお人形さんがいました。
お人形さんはとてもステキなドレスを着ていました。
お月様みたいに真っ白で、お花があしらわれてるとってもとってもステキなドレスです。
わたしは、それがウエディングドレスだとすぐにわかりました。
前に本で見たからです。
わたしが思わず「キレイ」と言うと、お人形さんはにっこり笑いました。
女神様みたいでした。
「貴女もいつかきっと着れるわよ」
そう言ってくれました。
だけど、わたしがこんなにステキなドレスが着られるわけありません。
たとえ着れても、お人形さんのようにすばらしく着こなせるわけがありません。
「このウエディングドレスには魔法がかかっているの。どんな人でも美しく着こなせるように魔法がね。だから貴女も大丈夫」
お人形さんはわたしの考えていることがわかっているみたいでした。
「本当ですか? わたしでも、わたしみたいのが着ても大丈夫なんですか?」
わたしが問うとお人形さんはいいました。
「このウエディングドレスを着るためには真実の愛を知ってなければならないの。貴女は知っているんでしょう? 心から愛していて、愛されているのでしょう? なら、きっと着れるわ。きっと似合うわ」
――ありがとう、お人形さん。
そう伝えようとしたところで、目が覚めてしまいました。
どうやらわたしは本を読んでいる途中で眠ってしまったみたいです。
ソファで寝転がっていたわたしの腕の中には一冊の本がありました。
寝る前によんでいた本。
表紙にステキな花嫁さまが描かれた本。
わたしは起き上がり、花嫁さまにあらためてお礼を言いました。
「ありがとう。わたし、いつでもドレスが着れるように愛を大切にします。真実の愛を守ります」
花嫁さまが、夢の中と同じように笑ってくれたように見えました。
わたしの名前はカナエ。
わたしは今、お家でお留守番をしています。
このお家はわたしのお城なんです。
あちこちにカワイイぬいぐるみがあります。
ベッドの側には大きなくまさん。
本棚の上には小さい小鳥さんたち。
そして天井にはヘビさんとクモさんもいます。
カワイイヘビさんとクモさんですよ。
お家を守ってくれてるんです。このお家の騎士さまなんです。
ソファにはイルカさんがいます。
新入りさんです。とってもカワイイです。
本棚にはたくさんの本があります。
どれもステキな本ばかりです。
絵本が多いけど、最近は文字しかない本もよみます。よめるようになりました。大人になったんです!
キレイなお風呂に、拾いキッチン、カワイイ食器。
あと、壁には電気を消したら光るイルカさんのポスター。
最近二人でつくったジグソーパズルも飾ってあります。
高いところに……かん、きせん? があって、窓のないこのお家にお外の空気を運んでくれます。
大きくてあんまりカワイクなかったからたくさんシールをはったらとってもカワイクなりました。
あの人が肩ぐるましてくれてたくさんはれました!
シールといえばレイゾウコにもたくさんシールがはってあります。
これも大きくて銀色で、あんまりカワイクなかったからです。
今ではごはんを守る立派な騎士さまです!
わたしには大事なおシゴトが3つあります。
まず一つはこのお家をキレイにすることです。
お風呂もキッチンもピカピカにします。
ソファにもベッドにも床にもチリ一つ残しません!
お次にごはんをつくることです。
レイゾウコから食べ物をだして、ごはんをつくります。
あの人が帰ってくる時間に合わせて、あったかいごはんをたくさんつくります。
ちなみに今日はトマトのスープとハンバーグさんです!
そして最後の一つ、一番大事なおシゴトです。
あの人が帰ってくるのを待つことです。
お家をキレイにして、ごはんをつくったらげんかんで帰ってくるのを待ちます。
いつも汚れて帰ってくるのでお風呂を沸かして、タオルも用意します。
たまに帰りが遅い時もあるけど、ずっとジッと待ちます。
そうすれば、あの人は必ず帰ってきてくれるんです。
わたしのために、いっぱいごはんの材料を取ってきてくれます。
このお家を見つけてきてくれたのも、あの人です。
あの人がいるから……。
だから今日もげんかんで静かに待ちます。
お家もキレイにしました。
ごはんもできてます。
お風呂もポカポカです。
いつでも帰ってきて大丈夫です!
あっ! ガチャンと大きな音がしました。
帰ってきたみたいです!
「おかえりなさい! トーヤ!」
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