二人の計画

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おっと。早速菊田さんから連絡来たわ。何々…早速優弥が食事に誘う!?早瀬さんってば意外と積極的なんだ。高嶺さん羨ましいな早瀬さんと二人で食事なんて。私と高嶺さんのどこが違うんだろう。歳は私が少し上だけど早瀬さんよりは下だし顔は…まぁ好みによりけりとして、え、じゃあ性格?私と高嶺さんの性格の違いは…自分じゃ分からないな。ま、でもとにかく100%早瀬さんが高嶺さんを好きとまだ確定していない訳だし私にだって望みはあるんだから私はこの恋をそう簡単に諦めたく無い。 「すみません。18:00ご予約のお客様なんですが少しご到着が遅れるそうです。お願いします。」 「了解です。あ、岩永さん。来店されたら厨房に直ぐに声掛けて下さい。準備があるので。」 「はい。分かりました。」 私は先ほどお店に遅れると電話をくれたお客様の伝言を厨房に伝えに行くと早瀬さんに呼び止められた。 「岩永さん。これ運んでもらえる?」 「はい。良いですよ…わっ、新作ですか?」 受け取った白いお皿の上に桃とモッツァレラチーズが交互に挟まれておりバジルの葉が添えられていた。 「うん。桃のカプレーゼ。」 「トマトのはっきりした赤も良いですけど桃の優しい鮮やかな感じがまた綺麗で私好きかも。しかも桃なんて美味しそう。」 「女性のお客様向けに作ってみたんだ。」 「人気出るんじゃないですかこれ。」 「そう?だったら嬉しいな。」 「私も家で作ってみようかな。」 「岩永さん料理するんだ。」 「しますよ~。結構好きですし。何時でもお嫁に行けますよ。なんて。」 チラッと早瀬さんを見上げる。 「へぇ~。」 それだけ?他には何か無いですか? 「あ…じゃあ、これ運んで来ますね。」 「うん。お願いします。」 私にニコリと笑って早瀬さんは厨房の奥へと作業に戻って行った。 この位じゃ効果無いわね。もう少し攻め込まないと。 私と高嶺さん二人は斎藤マネージャーからホールが落ち着いているので先に休憩をと促された。高嶺さんと私は一度更衣室に戻り鞄を持って休憩室へと向かった。すると高嶺さんの鞄に白やら茶色やら短い毛が沢山付着しているのが目に入った。 「ん?ねぇ、高嶺さん。何だか毛がいっぱい鞄に付いちゃってるよ。」 「うわっ、本当だ。ありゃ~。」 「どうしたの?」 「…実は歓迎会の帰りに…。」 菊田さんと早瀬さんが友人で…から始まり早瀬さんが久しぶりに再会した菊田さんを家に招き高嶺さんも誘われて一緒にお邪魔したと。その際猫のチロちゃんがすり寄って来て鞄にも毛が付いたんだろうと言う事だった。私の知らない間にそんな楽しい時間を過ごしていたなんて知らなかったし正直悲しかった。早瀬さんの部屋。どんな感じだったんだろう。今の私には喉から手が出る程羨ましかった。 「そ、そうだったんだ。チロちゃん見たんだね。可愛かったでしょ?」 平然を装ってみる。 「はい。実物はかなり可愛かったです。」 「だよ、ねっ。しかも高嶺さん猫に好かれそうだし。良かったね…。」 はぁ、駄目だ。普通にしなくちゃ。 「あぁ…はい。」 今の感じ高嶺さんにも伝わっちゃってるかな…。 「あれ、二人も休憩だったのか。」 するとそんな時早瀬さんが休憩室に入って来た。そのままコーヒーメーカーの前に行きコーヒーを入れ始める。そして横に座る高嶺さんが鞄からスマホを取り出し席を立った。 「ちょっと電話掛かって来ちゃったので外で話して来ますね。」 「うん。」 パタパタと早瀬さんと入れ替わる様に休憩室を後にする高嶺さん。もしかして私に気をつかってる? 「今日は久しぶりに暇だね。厨房の方も順番で休憩回してるとこだよ。」 「そうですね。珍しいかも最近だと。」 「そうだ岩永さんさっき料理得意って話してたけど良く作るのって何?」 「良く作るのだと簡単にチャーハンとかパスタとかですけど。」 「市販の素を使うの?」 「いえ。素も自分で作ります。なんか決まった味よりも自分なりにアレンジして食べる方が好きな味になるので。」 「凄いや。そっちの方が時間も手間も掛かるのに。」 「ただそっちの方が好きなだけです。あとは煮物もしますしね。煮豚が好きで煮卵も一緒に添えたりして。辛子を付けて食べると最高です。」 「美味しそう。俺仕事で料理してるから家じゃカップラーメンとか外食したりしてまったく不健康だよな。」 「あの早瀬さん。」 「ん?」 「猫見に行っても良いですか?」 菊田さんとやるって決めたんだから。 「あっ、そうだったよね…えぇっと、、」 この恋を中途半端に終わらせたくない。 「明日の仕事終わりにいかがですか?」 私は私の気持ちを真っ直ぐに早瀬さんに届ける。 「う…ん。分かった。」 後悔しない様に。 「ついでに料理も作って良いですか?」 悲しんだり泣くのはまだ早すぎる。 「いや、それは流石に悪いよ。」 そんなちょっとの事でへこたれるな。 「体が主本ですよね仕事は。」 最後までめげない。   「そうだけど…うん。じゃあお願い。」 時に想いは届くの…かも? 「了解です!明日仕事終わったら裏口で待ってて下さい。」 「分かった。」
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