二人の計画

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ピンポン。    次の日私が仕事から帰ってくるとインターホンが鳴った。時刻は19:30過ぎ。丁度部屋着に着替えてテレビでも点けようかとリモコンに手を伸ばした時だった。伸ばした手を引っ込め玄関に向かう。礼二は御手洗いに入っていて出られなかった。 「宅急便です。」 「はい…あ、ご苦労様です。」 宅急便を受け取りダンボールに貼られた宛名にはお母さんの名前があり昨日の電話で沢山頂き物をしたので礼二と一緒に食べてと早速届いたのだった。ガムテープをビリビリと剥がして中を確認するとデパートの有名菓子や一つ一つ色紙に包まれた果物がぎっしりと入っていた。 「今誰か来たんだよな?」 「うん。宅急便。ほら見て。びっしり。」 「ほら見てじゃねぇよ。俺が居る時は人が来ても出ない様にしろ。」 「…ごめん。」 「…にしてもその量さばけないよな二人で。あぁ…優弥に持って行くか。」 「そうだね…あ、でも岩永さんの件まだ気にしてるし礼二だけ行ってきて。」 「何も家ん中上がり込む訳じゃねぇんだし玄関先で済む話だろうがよ。」 「そ、それもそうだね。分かった。」 「適当に袋詰めるぞ。」 「うん。」 ───────。 「早瀬さん。次はお肉売り場に行きましょう。」 「あぁ…う、うん。」 私は仕事が終わると早瀬さんを車に乗せてスーパーにやって来た。昨日の約束通り今夜は猫を見せてもらうのと手料理を振る舞う事になっている。朝から楽しみにしていた私は早く仕事が終わる事だけを考えながら働いていた。結局この約束は私が強引にお願いしたからだったけどスーパーにこうして二人きりで買い物している姿はきっと周りから見たら恋人同士かはたまた新婚さんに見られているはず。そんな想像をしながら買い物してるなんて横に居る早瀬さんは思ってもいないんだろうな…っていうかそれどころかさっきから困惑顔を隠しきれずにキョロキョロとまるで人目を気にするみたいな歩き方止めて欲しいんだけどな。 「早瀬さん。なんか落ち着かないですけどどうしたんですか?」 「いや…職場の人に似てる人が居た気が。」 「職場の人?」 「何してるのってならない?俺達見たら。スーパーなんか居るし。」 「気になるんですか?」 「って言うかその…何て言うか。」 「構わないですけどね。私は全然。」 「…そ、そう。」 「それより早く買い物済ませて猫ちゃんに会いたいんですよ私。」 「そうだったよね…うん。。」   お肉売り場に行きパパッと買い物かごにお肉を入れると私達は会計をし車に乗り込む。 「一応掃除機はかけたけどそこまで片付いてないよ。昨日時間無くて。」 「大丈夫ですよ、何なら料理のついでに部屋の掃除もやりますから。」 「あ…いや…。」 ────────。 「マンゴーと洋ナシと桃。それからお菓子一箱…これ位で良いだろ。優弥一人だしな。あ、今日は違うか。オレンジも追加しとくかな。」 「え?何か言った?」 「いや一人言。」 「詰め終わった?」 「あぁ。ほらよ。」 「わ、何か重い。」 「頑張って持ってけ。」 「分かった。」 礼二が差し入れを準備してくれて私は早速早瀬さん家にお裾分けをしに向かった。 階段を下る途中煮物でもしている様な良い香りが漂ってきた。早瀬さん家からだろうか? ピンポン。 換気扇が回っておりやっぱりこの香りは早瀬さん家からだった。 「早瀬さ~ん。誰か来ましたよ。」 え?女性の声。 「私出ましょうか?」 バタバタバタッ! 「いっ、いい、出なくていい。俺が出るからっ。」 「そうですか。」 ガチャリと扉が開く。 「高嶺さんっ、、」 「ん?あ、高嶺さんだ!」 キッチンから水玉柄のエプロンをつけた岩永さんが横からひょこっと顔を出す。 「あ、え?岩永さん…あぁそうか。猫ちゃん見に来たんですね?」 「うん。そうなの。ついでに料理もしに来たのよ。早瀬さんの不健康な話聞いちゃったからね。」 「そうかな~と思いましたよ。丁度良かった。これ親から送られて来たんですけど食べきれないんでで召し上がって下さい。」 紙袋を差し出すと早瀬さんは苦々しい顔を見せながらでも最後には笑ってこう言った。 「ありがとうね。わざわざ持って来てもらって…わっ、ズッシリ。」 「果物とお菓子が入ってます。」 「しかも何か高級そうだよこれ。綺麗に包まれてるし。」   「貰いものなので気にしないで下さい。じゃあ私はこれで。」 「高嶺さんありがとうね~。」 「いえ。岩永さんエプロン似合ってますよ。仲良くごゆっくり~。」 「本当?嬉しい。」 「え、ちょっと高嶺さん俺は、、」 パタン。    ───────。 なんだ。急接近してたんだあの二人。 これで私も一安心だな。
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