泰幸君

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「泰幸君!あっ、皆も。久しぶり。」 私は駆け寄り皆に混じる。 「おぉ!高嶺じゃん!」 「あ!雅~!」 「え?雅、久しぶりだね~。」 私以外既にメンバーは揃っていた。そしてその中に1番仲の良かった菜々子も居た。 「菜々子~。最近会えて無かったから嬉しい。私が土日祝日の仕事してるから会う時間減っちゃって私も寂しかったよ。」 「しょうが無いよホテルだもん。あ、レストランか。うん、だけど今日会えたし沢山話そうよ。」 「うん。そうだね。」 「高嶺来られて良かったな。俺今日の幹事だから高嶺に連絡したんだ。久しぶりに顔見たかったしな。」 またそんな嬉しい言葉を泰幸君は私にくれる。 「本当はね。今日シフト入りそうだったんだけど仲良しな先輩が協力的で代わってくれたんだよね。有り難い事に。」 「そうなんだ。良かったな。」 「うん。泰幸君は背も凄く伸びたし顔付きも変わったね。何かシュッとして大人になった。でもさっき見せてくれた笑顔は高校の頃のまんまの笑顔だった。泰幸君元気そうで良かったよ。」 「う…うん。まぁな。はは。」 「…?」 泰幸君の顔が一瞬曇った様に見えたけど気のせいかな…。 そう言えば礼二が居ない。一緒に電車を降りたはずなのに。チラチラと目を動かして辺りを確認する。なんだ。礼二きちんと約束守れてるじゃない。それで良いのよ。私は安堵していた。その時は。 「はい、じゃあ店迄移動するから俺に着いてきて。」 「は~い。」 「おう。」 幹事の泰幸君が先頭になり予約してくれた鉄板焼き屋さんへと歩を進めた。私は先頭で歩く泰幸君とたまたま横になり歩いた。すると泰幸君は私に色々と話をしてきてくれた。 「高嶺レストランの仕事どう?やっぱりホテルの接客って大変?」 「レストランの仕事は楽しいよ。小さなお子さんの居る家族連れの方とか見ると癒されるし元気ももらう。それなりに大変な事も勿論あるけど先輩に恵まれているからなんとかやって行けそうかな。泰幸君は?仕事どう?」 「まぁ、俺は普通にサラリーマンだからさ接客の大変さに比べたら全然だけど。」 「サラリーマンこそ大変って聞くけど。朝の通勤ラッシュから始まり残業残業…みたいな。」 「あはは。そうだな。そうかもしれないな。言われてみれば。昨日も残業してたな俺。」 「ほら~。あはは。」 「あれ?高嶺今日は1なんだな。」 「そうっ、そうなの!1人なの。珍しいでしょ?」 「だよな。ま、もう社会人だしな。」 「うんうん。社会人だし…ねぇ。はは。」 社会人であり大人である私。そんな私にボディーガードなんてやっぱり泰幸君からしてみてもどこか違和感を覚えてしまうのだろうか?いくら私が高嶺ホテルの孫だからと言ってもそこまでするのはやり過ぎだとか思われてるのかもしれないな。何処へ行くにもついてくる礼二に私も正直煩わしさを感じた事が何度もあった訳だし。もし今度泰幸君と会う機会があったのなら今日みたいに離れて護ってもらう事にしよっと。 駅からものの5分位の飲食店の建ち並ぶ通りにそのお店はあった。以前泰幸君が会社の人達と訪れた事がありそれからお気に入りになったとか。店に入るなり海鮮の焼ける香りがしてそのテーブルを見れば小振りの鉄板の上に大きな帆立や海老が音を立てていた。先に入っていたお客さんのその光景が印象的で今日は絶対帆立と海老を食べると決めた。私達は奥の8人掛けのテーブルに案内され端に私が左隣には菜々子真正面に泰幸君が座った。泰幸君は立て掛けてあるメニューをさっと私の前に差し出してくれておしぼりも配ってくれた。爽やかな所だけでなく周りに気が仕えて幹事なんかも引き受けてくれる纏め役みたいな存在でもあるのが泰幸君の魅力でもあった。 「高嶺と石見飲み物決まった?」 「えっと私は生ビール。菜々子は?」 「私はハイボールにしようかな。」 「オッケー。お~い、そっちもドリンク好きなの頼んでな~。」 「はいよ~。」 「すみませ~ん。」 店員さんを呼んでくれてお酒を注文してくれて食べ物も幾つか注文していた。その中にさっき私が見ていた帆立と海老のセットプレートも注文に上がっていた。 「…じゃあ以上で。」 「かしこまりました。」 メニューをしまいながら泰幸君がこちらを見てきた。 「さっき入って来る時高嶺が羨ましそうにあそこのテーブルの帆立やら海老やらを見てたからてっきり食べたいのかなと思ったんだよね。あはは。」 「えっ!あ、私のそんな顔見られてたなんて恥ずかしすぎるっ。」 赤面した顔を両手で覆い隠す。 「泰幸良く見てるね~。雅の事。ふふふ。」 「たまたま目に入っただけだよ。俺も食べたかったしな。」 「そっか。話は変わるけど泰幸って昔雅と仲良かったよね?」 「そうだな。一緒に帰ったり遊んだりしたな。」 「したね~。懐かしい。」 「高3の時始めて同じクラスになってそれから徐々にって感じだったな。好きなアーティストも同じで。」 「うんうん。」 「で、本格的な受験シーズンになり遊べなくなってそのまま卒業で違う大学に進学…みたいな。」 「大学通ってる時は遊ばなかったの?」 「遊ばなかったな…って言うか俺の通ってた大学田舎の方で下宿してたからな。あんまり実家にも帰ってなかったし。」 「あ、そっか。なんか泰幸の受かった大学遠いいって聞いたな。」 「そう。山近いぜ。」 「会社はこっちなんでしょ?」 「うん。」 「ならたまにまた吞み会出来るね。そうだ。泰幸彼女居ないの?」 菜々子がそんな質問をしているのがとても気になり思わず耳をかたむける。
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