二人の計画

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さてと俺はダンボールの残りの果物でも冷蔵庫にしまうかな…。 下の野菜室をガラッと開けたが余り隙間が無く入れられそうに無かった。なので上の棚にしまおうと観音開きの扉を左右に開いた。すると目の前に缶ビールがワンダース。でもこれは俺が呑む為の物では無い。 この優弥の差し入れはまた今度の作戦に回すかな。 ぼそり自分に言うと缶ビールを奥へと追いやりその前やら上に果物を置いていく。単純な作業のはずなのに自然と笑みがこぼれてくるのが自分でも可笑しくてたまらなかった。それは今頃優弥があたふたしている様を想像してしまっていたからだった。 「ただいま~。」 雅が帰って来た。 「優弥居たか?」 わざと聞いてみる。 「うん。居た居た。それがさぁ…岩永さんも一緒でさ。」 「え?岩永さんが優弥の家に?」 知ってるよ。で、どんな反応だったんだ? 「そうなの。びっくりしちゃったよ。」 あたふたしてただろ? 「猫見に来られたんだな。」 「うん。後料理もしてたよ。可愛いエプロンつけて。」 岩永さんも気合い入ってんな。 「岩永さんが優弥の家で料理を?」 一体何をせっせと作ってるんだろうな。 「そうなの。」 「もうあの二人そういう関係に発展したって訳だ。お早い事で。」 「だよね?びっくりしちゃったよ。だけどなんか私的には岩永さんへの気持ちが晴れてすっきりした。早瀬さんと上手くいってくれればそれで良いもん。あ~良かった。」 「そうだな。」 雅が二人をくっつけたいだなんて優弥は思っても無いんだろうな。 「あ、ねぇ礼二。」 「何だ?」 「早瀬さんに誘われてたフレンチのお店に行く約束だけどお断りした方が良いのかな?でも私は料理の勉強にはなるし行きたい気持ちはあるんだけど。」 そう話す雅の目は真剣そのものだった。確かに雅が仕事に対して取り組む姿勢は本物だったし勉強をしたい気持ちも嘘では決して無い。だからこそ俺は返答に悩んだ。色恋云々は今は抜きに考えてやらないといけないと。 「優弥から料理の事を教わるのは今のお前にとって今後に繋がると俺も思っている。この件に関してはお前なりに割り切って優弥から勉強をさせてもらうんだっていうそれだけを頭に置いて行けばいいんじゃないか?」 既に岩永さんは優弥と雅が二人で食事に行く事を俺伝いで分かってはいるはず。後で俺が上手くフォローをしておけば問題無いよな。俺だって二人には行って欲しくは無いというのが本心だが。 「…うん。そうだね。分かった。そういう事にする。」 「吸収出来るもんがあったらどんどん自分の力にしろ。二年後見違える位の自分に出会えるかもな。」 だけど俺はそんな成長していく雅も見てみたいんだ。 「え、あ、ありがとう。なんか調子狂う。礼二にそんな風に言われると。」 「はぁ?俺は二年後料理の勉強し過ぎてブクブクに太ったお前に出会えるかもって想像して面白れぇなと思っただけだ。はっは。」 「ひっど~っ!」 「騙されたな。」 「そうでしたそうでした。礼二がこんな捻くれた性格してるんでした。」 「それより飯食うぞ。」 「はいはい。」 ────────。 「お父さん、お父さん。」 「どうしたの?」 「ねぇ。見てこの写真の方。」 「ん?随分と好青年だね。雰囲気が礼二君みたいだな。」 「でっしょ~。」 「雅には言ってあるの?」   「これからよ。でもきっと気に入ってもらえると思うわ。」 「雅本人に任せるのも良いが泰幸君の件があったからな。お母さんが気に掛ける気持ちも分かるよ…雅のを。」 ────────。
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