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「コースも良いけど単品でも頼めるしどうする?」
早瀬さんは私にメニューを開いて見せてくれた。ざっと目を通すとうちのレストランには無いメニューなんかも幾つかあって興味をそそった。そしてそれを指差しながら言った。
「これなんかはオリジナル?なんですかね。食べて見たいですけどでも今日は勉強なので早瀬さんに全てお任せします。」
「そうなの?」
「え?違うんですか?」
「あっ、いや。そうだね。そうだったね。はは。じゃあ適当に選んで注文しちゃうね。」
早瀬さんは私に向けていたメニューを自分に向けて直ぐに店員さんを呼びスラスラと注文をしてくれた。どんな盛り付けでどんな味付けの料理が出てくるのか胸を弾ませている私に向かって早瀬さんは突然クスクスと笑い出した。
「どうかしましたか?」
「だって高嶺さん…初めての遊園地って顔してる。」
「え、本当ですか!?いや、楽しみ過ぎて。」
「可愛い。」
「止めて下さいよ。さっきの店員さんと言い。」
「つい正直が口から出ました。」
「だからそういうの要らないですから。」
すると私が動揺している前で早瀬さんはガラリと表情を変え私に向き直る。
「この間の事なんだけど。」
「この間っていうのは。」
「高嶺さんが差し入れ持って来てくれたあの日。」
「あぁ…あの日。」
「岩永さんに猫見たいって前から言われててそれで来ただけなんだよねあの日は。」
「はい。岩永さんが前に猫見たいって言ってたの覚えてますよ。」
「そうだったね。」
「しかも外に迄いい香りが漂ってきて、で、玄関開けてみたらエプロン姿の岩永さんもお出迎えしてくれて。まるで新婚さんのお宅にお邪魔した様な気分でした。」
ゴホッと出された水を口から吐き出しそうになっている早瀬さんは口元に紙ナプキンを当て私のその言葉を取り消すかの様に慌てながらこう言った。
「岩永さんはただの同僚だからっ。それだけだから。」
「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ。二人はどう見てもお似合いのカッ、、」
「高嶺さんっっ。」
早瀬さんの声が店内に響く。こちらを気にする店員さんの目線も感じる。私自身早瀬さんの気に障る様な言葉を掛けたつもりなど無かった。でもそうじゃ無かった。
「高嶺さんは何か勘違いしてるよ。」
「勘違いですか?」
「俺が岩永さんを好きだと思ってるよね?」
「二人が早瀬さんの部屋に一緒に居て岩永さんが料理もしてたのでそうなのかと…。」
すると早瀬さんは肩を上下させ同時に深く溜息をついた。
「見られたく無かった。高嶺さんには。」
鈍感な私だけど早瀬さんのその言葉で少し察しが付いてしまった。
「俺は高嶺さんが好きだよ。」
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