フレンチデート??

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…っ。 「料理も出ないうちからこんな話になるとは…つい気持ちが抑えきれなかった。ごめんね。」 「いえ…。」 「言うつもり無かったんだ。高嶺さんの気持ちがまだ俺に向いていないから。俺怖がりだから玉砕するのは避けたかったんだよね。」 「早瀬さん…。」 「でも俺高嶺さんへの気持ちは本当だし真剣に付き合いたいと思ってるよ。」 そう口にした早瀬さんからは誠意しか伝わってこない。そんな彼だからこそこちらもきちんとした気持ちで応えなければならないと思った。私の中にある本当の気持ち。ふと礼二の顔が浮かぶ。前に礼二と早瀬さんみたいにこんな風に向かい合いながら食事に行った時私は一人落ち着かずドキドキしたのを覚えている。けど早瀬さんを前にしている今、高鳴る私の胸はと言うと…まだ見ぬ料理に向けられたものだった。 「もしかして礼二が好き?」 「好き…なんだと思います。」 「男性としてだよね?」 黙ったままコクリと頷く。 「はぁ~。そっか~。」 早瀬さんはまた大きな溜息をついた。けど今度は重苦しい感じでは無くてあっけらかんとした感じで。 「俺さ。実は礼二に負けた事無かったんだよね。」 「え?」 「自信あったんだよ。好きな子…始めて取られたな。」 「取るだなんてまだ私達そんなんじゃ。」 「その内きっとそうなるから同じだよ。」 「それどういう、、」 「あ~ぁ。学生の頃礼二は礼二で人気あったけど俺もそこそこだったからさ。どうしよう。高嶺さんに未練タラタラだ俺。」 「は、早瀬さんっ。」 「冗談冗談。でも高嶺さんの気持ちに礼二は気付いてるんじゃないの?毎日一緒に居たらさ。」 「気付いてるんですかね?私は分からないです。感情が読み取り辛くて何時も。職業柄ポーカーフェイスでいなくちゃいけないからなのかもしれないですけど。」 「あはは。あんなに分かり易いヤツなんていないよ?」 「分かり易い?」 「そうだよ。誰がどう見ても好きな子いじめてる男にしか見えないってば礼二は。」 「私が年下なのと付き合いも長いのでお互い遠慮が無くなってるだけなんですよ多分。」 「ふ~ん。高嶺さんはそう捉えているんだ。」 「はい。」 「じゃあ隣の作業が終わらない限り一緒に居られるこの絶好のチャンスを使い熟せて無いんだね。」 「チャンスって…は、はい…。私からは何も望みませんし。自分が礼二にどうして欲しいとか言えるはずも無く。」 「俺が礼二なら直ぐにでも…なんて。アイツ高嶺さんが手の届くとこに居るってのに何考えてるんだ?」 「礼二の心が読めません私は。」 「近すぎるが故に手が出せないのか?それとも立場的に…?」 一人ぼそぼそと話す早瀬さん。 「何ですか?」 「いや。何でも無い。でもなんだか高嶺さんの話聞いてたら今フラれたばかりなのにこっちが二人にヤキモキしてきちゃったよ。」 「すいません。」 「謝る事じゃ無いからさ。まぁとりあえず俺は俺でそんな二人の行く末を見届けさせてもらうよ。」 「早瀬さんって切り替え早いタイプですね。」 「俺も自分でそう思う。」 あははっと笑い合うと今までの空気がガラリと変わり何時も通りの私と早瀬さんの雰囲気を取り戻した。そして会話の最中に運ばれていた料理にお互い手を付け早瀬さんの丁寧な説明を受けながら私は料理に舌鼓を打った。 「ご馳走様でした。私の勉強会だったのにご馳走になってしまってすみません。」 帰りも行きと同じくタクシーに乗りアパート迄帰って来た。 「どういたしまして。今日はちょこっと変な空気にさせちゃったから俺の責任でもあるしね。」 「いえ。でもホテルと肩を並べる位美味しくて驚きました。」 「なら良かった。あのお店のシェフ実は三つ星レストランで働いてたシェフなんだよ。」 「そうだったんですね。だからあんなに美味しいんだ。」 「独立して自分の店持つのが夢だったんだってさ。うちのレストランと同じ様なメニューでも全く違う料理って感じしなかった?」 「しました!」 「それがシェフの実力だと俺は思ってるんだ。勉強になるよ毎回ね。」 「本当にそう思います私も。早瀬さん。ありがとう御座いました。」 「今度は礼二と来られると良いね。お休み。」 「はは…。お休みなさい。」 手をヒラヒラとさせながら早瀬さんは帰って行った。
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