泰幸君

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「彼女?居ないよ。」 「何で?」 「何でって…?」 「もしかして仕事忙しいから作らないんじゃないの?」 「いや、作らないんじゃ無くて好きな子が周りに居なかっただけだよ。」 「?今は居るみたいな言い方だけど~。」 「えっ、いや…。」 ん?今泰幸君と目が合った。 「雅も今は居ないの?彼氏。」 「うん。」 「じゃあさ、今度2人でデートしてきなよ!」 「えっ!?ちょっと菜々子~っ。」 私は申し訳なさそうに泰幸君の方を見た。すると泰幸君は。 「良いね。久しぶりに高嶺遊ぼうぜ!」 「泰幸君っ、本気で言ってる?」 「勿論。デートしようぜ。」 「う、うん。」 「は~い!2人で楽しんで来てね~!」 「飲み物お待たせ致しました~。」 タイミング良く店員さんが飲み物を運んで来た。そしてそんな具合で私は泰幸君とデートする約束をしてしまったのだった。こんな早々とそんな展開になるなんて信じられないまま吞み会はスタートしていったのだった。 暫くして食べ物もきて帆立も海老にもありつけた。鉄板で手際よく焼いてくれる泰幸君は格好良くて益々好きになっていた。 お腹もまぁまぁ満たされてほろ酔いにもなっていた私は御手洗いに向かうため席を立ち歩き出した。 お店の中は主にテーブル席で埋め尽くされているが端にはお1人様用のカウンター席も設けられていた。 カウンター席もあったんだ~…誰か座ってるな。 背中を向け煙草を片手に1人男性が座っていた。その後ろを通り過ぎようとした時だった。 「随分ご機嫌ですね。雅お嬢様。」 「はっ、、礼二。何やってんのよ。」 「見れば分かるだろ?夕飯食べてんだよ。」 「それは分かってるけどどうしてこんな近くに居るのよって言ってるのっ。」 「海鮮の焼ける香りがしてついつい入っちまった。」 「ついついって…とにかくこれ以上は近寄らないでいてよね。分かった?」 「泰幸君と楽しめよ。」 カウンターに肘を突きニヤリと笑う礼二。 「礼二には関係ないからっ!フンッ。」 そう言うと私は御手洗いに向かった。 御手洗いから出てくると礼二には声を掛けずに後ろを素通りし席に戻った。戻りが少し遅かったのを心配してくれた泰幸君が私にお冷やを注文してくれていた。 「高嶺大丈夫?」 「あ、うん平気。ありがとう。」 「皆大分食べたからそろそろ出ようかって話になってて。」 「そうなんだね。うん。私も沢山食べたし出られるよ。」 「うん。分かった。じゃあ会計してくる。」 そう言うと泰幸君はレジに向かった。 席に残された私達も鞄を持ち少し遅れて泰幸君の後に続いて出口の方へと向かった。私は途中カウンターに目をやったが既に礼二は居なくなっていた。周りを見渡してみたが礼二らしき姿は見当たらなかった。 店の外に出ると二軒目に行くとか帰るとかそんな話になった。 「雅明日仕事?」 「うん。仕事入ってるから私は帰ろうかな。」 「私も仕事だけど1時間位呑んで行こっかな。」   「そっか。分かった。じゃあまたね。」 「泰幸は行った方が良いね。幹事だしね。」 「そのようだな。じゃあまたな高嶺。連絡するよ。おやすみ。」 「分かった。待ってる。おやすみ。」 こうして皆と別れ私は駅に歩き出した。
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