胸の内は…

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「雅さんとで話たいんですが。」 ガバッと開いた両足に肘をのせガンを飛ばす波多野さん。 「…分かりました。」 不服そうな態度で礼二は先に部屋に帰って行った。 「早瀬さんからあの紙受け取ってくれましたか?」 礼二が去った途端コロリと表情を変えニコニコした笑顔で私に話し掛ける。 「あ、はい。受け取りました。」 「良かった。これから会うのに連絡先知らないと不便だからと思って。で会いたい時とかに。」 口元に片手を添え二階に居る礼二の方をチラリと見ながらこっそりと私に呟く。 「そ、そうですか。」 「今日来たのは特に用があってとかじゃ無いんだけどただ単に会いたくて。雅さんに。」 「私に?」 「はい。いきなりお見合いっていうのも何だかな~と思って。折角こうして知り合えた訳だしもっと交流しても良いかなと。」 「そうですね。いくら親の為の形だけのお見合いでも交流は必要かもしれませんね。連携プレーですからね。」 「そうでしょう?だからこうして会いに来た訳なんです。」 「ありがとうございます。波多野さんもお仕事あるのに。」 「いや、僕はどうにでもなるから大丈夫ですけど。雅さんもお仕事で疲れているのに僕が急に伺ってすみません。もう帰ります。」 「もうですか?」 「えっ…なんか嬉しいな引き留めてもらえるなんて。もう少しここに居たくなってしまいます。」 「お茶でもお出ししようかなと。」 「ありがとうございます。でも今日は帰ります。あ、そうだ。僕の連絡先登録しておいて下さいね。」 「分かりました。帰ったら直ぐに。」 「よろしくお願いします。ではまた。お休みなさい。」 「お休みなさい。」 私と波多野さんは数分間の会話をして別れた。そんな僅かな時間の為に忙しい中私に会いに来てくれる波多野さんのその良心に胸が温かくなった。でも波多野さんが礼二を敵対視している様に感じるのは詳しくは分からないままだけど…。 親の為のお見合い。 今はそう思ったままでも構わない。 でも直ぐに俺と結婚したくなるよ。 好きにさせてみせるからね…雅さん。 狙った獲物を逃す性分は俺には無い。 「ただいま。波多野さん今帰ったよ。」 私が帰るとボタンを外し胸元を露わにした礼二が換気扇の下で煙草をふかしていた。 「そうみたいだな。」 私は目のやり場に困りながら続ける。 「あ、あのさ、波多野さんの連絡先聞いたからこれからちょくちょく会うと思うの。」 「へぇ。」 「連絡取り合って。」 「…。」 「。」 「ふ~。」 私は波多野さんと会う事をアピールしてみてもこちらを一切見ずに煙草をふかしてばかりの礼二。 「ねぇ、聞いてるの?礼二っ。」 私は下から礼二の顔を覗き込む。 するとはだけた胸元が直ぐそこに。 「はっ、、もういいや。」 顔が赤くなっていくのを見逃すはずのない礼二は私の顔をグイッと引き寄せる。 「お前。俺が波多野の顔にそっくりで動揺でもしてんじゃねぇのか?」 「してっ、してないからっ。」 「だけどな。俺は波多野じゃねぇし俺は俺だ。波多野に俺を…もしくわ俺に波多野を重ねて見る様な事があったらお前を軽蔑する。」 「そこまで言わなくても。」 「俺は誰かと同じ人間だなんて思われたくねぇだけだ。気持ち悪りぃ。」 「思って無いってば…。」 「波多野だけは好かんっ。風呂!」 煙草を消し私の顔をフィッと手放した礼二はそのままお風呂に直行した。
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