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「ありがとう御座います波多野さん。」
「雅さんの分はまた別にあるのでその内またお届けに上がりますね。」
「すみません。」
「それでは僕はまた。」
「え、ちょっともう帰っちゃうの?コーヒーでも飲んで行って純さん。雅もお引き留めして。」
「コーヒー飲んで行って下さい波多野さん。」
「…では一杯だけ。」
「良かった。あ、じゃあ雅の部屋に運んで貰うから二人は二階へさっ、どうぞどうぞ。」
お母さんは私と波多野さんの背中を押しながら階段へと促した。
「あっ、待って私の部屋散らかってて、やっぱりリビングで、、」
「雅が引っ越した次の日に斉木さんが掃除してたから片付いてるわよ。」
「あぁ…そう。」
私は動揺していた。
まだ付き合ってもいない波多野さんと部屋に二人きりになる事を。けど下にはお母さんや斉木さんが居る訳だからそんな変な雰囲気にはならないよね…て言うかなっちゃ駄目なんだから。
ガチャ。
「どうぞ。」
部屋の扉を開けると引っ越ししてから私も初めて見る整った部屋に驚く。斉木さんに感謝だわ。
「わぁ…ここが雅さんの部屋かぁ。広いな。カーテンもベッドカバーも可愛らしい。」
「そんなっ、そんな所褒められると恥ずかしい。」
「いや、変な意味じゃ無いですよ。何か女の子だな~って。」
「はぁ…。」
「ん?そうだ。今日はあのボディーガードさんは?下に居なかった気が。」
「今日は来てないんです。実家だしお母さんのボディーガードも一応居てくれるので安全かと。」
「そうでしたか。」
波多野さんは礼二の目が無いと分かったのか安堵した表情に変わる。
私はテーブルの側にクッションを敷き波多野さんに腰を下ろす様に言うとそのタイミングと同時に斉木さんがコーヒーを運んで来てくれた。
「波多野さんどうぞ。飲んで下さい。」
「頂きます…あっっつ!!」
「だっ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫。はは。」
コーヒーを溢した波多野さんの白いシャツの胸元に茶色の丸いシミが付いてしまった。私は斉木さんがコーヒーと一緒に持って来てくれたお絞りで波多野さんのシャツの染みをトントンと叩く。
「あぁ~、染みちゃってるぅ。」
「これ位なんて事無いんで…シャツは沢山あるし。」
「でも…えっ、、」
そう言う波多野さんに向かって顔を上げると思ったより二人の距離が近い事に私は焦る。
「あ…すみませ…っつ、、」
握っていたお絞りが床にパサッと落ちる。
「親切な雅さん…可愛い。」
私はまた抱きしめられてしまっていた。
「波多野さん…。」
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