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予期せぬ…
一ヶ月など毎日の仕事に追われあっという間に過ぎ去り前日の朝を迎えた。私は両親と細々とした打ち合わせをしに今日実家に戻って来た…礼二も一緒に。明日の為にお母さんが紺色でジャケットの襟にパールの付いたスーツを用意してくれてそれに腕を通しながらお母さんと会話をしている。
「ねぇ、お母さん。」
「何?」
「波多野さんのご両親ってどんな方?」
「奥様の方には会った事は無いから分からないんだけど波多野さんは家のパパみたいに大らかで良い方よ。あっ、それに凄く仕事が出来るわ。」
「へぇ~そうなんだ。良かったぁ。」
「お母さんが言うと大分ひいき目になっちゃうけど雅は愛憎もあって人に気に入られる性格してるからきっと波多野さんのご両親も良く思ってくれるわよ。」
「そうかなぁ…。(例え気に入られ無くても良いのだけどね。)」
「あらっ!よく似合ってる。お母さんの見立て通り。」
「ありがとう。」
姿見に映る凛々しい自分に新鮮な感じを覚えつつ明日のお見合いを両親の為に無事に終えたいという使命感にも似た思いでいた。
当日。
遂にこの日が来た。私は目覚ましよりも早く目が覚めてしまった…と言うかあまり熟睡が出来ずに夜明けより少し前にはもう起きていた。とりあえず出発迄はまだ時間があるので部屋着に着替えてリビングに下りる。
「おはよう。」
「おはよう雅。」
お母さんもお父さんも起きていてソファでコーヒー片手にテレビを見ていた。まだ朝が早いせいか礼二の姿は無い。
「雅お嬢様も飲まれますか?コーヒー。」
斉木さんに言われ私もコーヒーをお願いした。
「昨日は良く眠れた?」
「あんまり。」
「あら、そうなの?お母さんとお父さんはぐっすりよ。」
「そ、そうなのね。所で礼二は?姿が見えないけど後で来るの?」
「出発時間迄には家に来てって言ってあるから後で来るわよ。」
「分かった。」
「じゃあ皆で朝食食べたら準備しましょうね。」
「うん。」
斉木さんが朝食の支度をしてくれて三人で済ませると私は部屋へ戻り着替えやらメイクを始めた。
…よしっ。
準備が整いまたリビングへ下りようとした時インターホンが鳴った。階段を下りきると玄関に礼二の姿が見えた。今日も礼二は特別の日だというのに別段洒落たスーツを身に付けている訳でも無く普段の格好と何ら変わらなかった。それもそうか。私がお見合いするだけで礼二はお見合いをする私の護衛に就くだけなんだから。
「おはよう。」
礼二は私をチラリと見ただけで直ぐに目線を反らした。
「あぁ。」
「…。」
礼二を目にしたらそれ以上言葉が出てこなくなった。
「あら、礼二君おはよう。今日はよろしくね。」
「おはよう御座います奥様。お任せ下さい。」
「うん。じゃあ礼二君も来た事だし皆準備整ったら少し早いけど行きましょうか。」
私達は予定よりも早めに家を出発しお見合い会場となる太平園へと向かった。
────────。
「皆さんお揃いで。お待たせしてしまいましたね。」
早めに到着した私達は先に部屋に通されて波多野さん達が来るのを待っていたのだった。
「いいえ。私達も今到着したばかりです。」
「初めまして。高嶺雅です。」
私は立ち上がり頭を下げながら言う。
「これはこれは雅さん。お写真よりも綺麗な方でびっくりしました。純が一目惚れだったんですよ。」
「あら!そうだったの純さん!」
「えぇ。」
「良かったわね雅。うふふ。」
「え、あぁ…うん。」
「雅さん。お元気でしたか?」
「はい、一応。何度かお誘い頂いていたのに行けなくてすみません。」
私は仕事が忙しかったのと私用もあってバタバタとしていた。
「いえ、大丈夫です。僕も少し忙しくはしていたので。」
「同じですね。」
「雅さん程では。」
両家の挨拶もそこそこに予め頼んでおいたコース料理を出して貰う様に従業員の方にお願いをしてお見合いは始まった。
しかし…。
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