泰幸君

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はぁ…酔っぱらっちゃったな。 そう呟き顔を手の平でそっとあてがう私はホームで電車を待つその間今日の吞み会を思い返していた。思ってた通り泰幸君は素敵になってたし色々と話も出来て楽しかった。私が聞きづらい事も菜々子が聞いてくれたし私が1番聞きたかった事も。泰幸君には今彼女は居ない。だからと言って私と付き合ってもらえるかは分からないけれどでも、デートの約束もすんなり決まって正直驚いている。とんとん拍子に事が進むのが嬉しくもあり少し怖くもあった。 連絡するよ───。 泰幸君。早く会いたいよ。 「ニヤニヤ気持ち悪りぃ。」 泰幸君で頭がいっぱいな私は顔が緩みっぱなしになっていた様でいつの間にか現れた礼二にバッチリ見られてしまっていた。こういう所礼二は見ると馬鹿にしてくるからあんまり見られたくないのに。 「失礼ね。だったら見なきゃ良いじゃない。」 「側に居るのに無理な話だな。」 「じゃあ見たって何も文句言わないで。」 「はいはい…ほら、電車来たぞ。」 軽くあしらうようにして私と電車に乗り込んだ。 家に着くと既にお風呂の準備がされていて礼二が先に入れと言うので遠慮無くそうさせてもらった。帰って来てお風呂の準備が出来てるなんて。それに食事だって完璧で。仕事はきちんと熟せるのよね礼二。 二階へ行き部屋から寝巻きと下着を手にしお風呂場へと向かった。礼二に命令口調で先に入れと言われて素直に返事をしたのは服や髪に鉄板焼き屋さんの煙の臭いが付いてしまっていて早くお風呂に入りたかったからだった。 全てを洗い終えて湯船にゆったり浸かり体が温まった所でお風呂から上がった。タオルでサッと拭き下着と寝巻きを身につける。濡れている髪を束にして上の方でクルッとお団子にし脱衣所を出た。お風呂でサッパリとしたせいか酔いも大分さめていた。 「礼二空いたよ。」 キッチンへ行き冷蔵庫からペットボトルを取り出しながらテレビを見ていた礼二にそう言った。 「高嶺遊ぼうぜ!」 「え?」 「デートしようぜ。」「うん。」 「何1人で言ってんのよ。」 礼二がさっきの泰幸君と私のやり取りを真似してくる。 「いや…泰幸君とデートの約束が出来て良かったなと思ってさ~。」 「て言うかそんな話も聞いてたなんて本当失礼。プライバシーの侵害だわ。それと別に礼二に泰幸君と私がデート出来る事喜んでほしくもないんだけどね。何か言い方嫌みっぽいし。」 すると礼二はテレビを消して立ち上がり私に近寄り下から顔を覗き込む。 「お前バレバレ。」 「はっ?何が。」 「何がって。私は泰幸君が大好きですよ~がだよ。ぷっ。」 「そんなとこまで見てなくて良いからっ!あ~っ、だから離れててって言ったのにっ。」 「見たもんは見たんだ。当分忘れねぇな。あはは。」 「もぉっ!」 私はからかわれ悔しくて礼二の体を拳でポコポコと叩いた。すると叩いている手が捕まり引き寄せられるとアップにしていたうなじを指でツ~っとなぞられた。 「今度は泰幸君にこのうなじも見せつけてやったらいい。まだ余計な産毛の残るこの垢抜けないうなじを。ふっ。」 「っ!?」 私は慌てて手でうなじを押さえると礼二は背中を向けスタスタと出て行ってしまった。礼二に触れられた箇所が熱を持ちなかなか引いてはくれないでいた。
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