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テーブルにはワインや前菜が並べられていき皆それぞれがそれに手を付け始めた時波多野さんのお父さんが口を開いた。
「こんな素敵な日本庭園を眺めながらの食事は何とも優雅で流石高嶺さんは良いお店を知っておられる。結婚式場でしか耳にした事が無かったので今度私の仕事でも使わせて頂こうかなと思います。」
「太平園さんのこのお店は以前仕事で使わせて頂いた時に私が気に入ったのでそれで。個室ですし静でお話しもしやすいかと思いまして。」
ここ太平園は結婚式場で有名だが中のフレンチレストランや日本料理などもなかなかの評判を呼んでいる。
「フレンチと言えば雅さんが働いている職場もそうでしたよね?」
「はい。」
「雅のレストランも考えたのですが場所が遠いいのと周りの目もありますから今回はここに決めたんです。」
「そうでしたか。今度そちらに行った際には是非伺わせて頂きたいです。」
「お待ちしてます。」
「純は何度か行った事あるんだよな?」
「うん。フレンチ美味しかった。雅さんの働いている姿もこの目で見てきた。」
「そうかそうか…あ、あとホテル恋花は内装が豪華絢爛と聞いております。そんな場所で結婚式なんて挙げられたらさぞ華やかでしょうね…なんて少し気が早かったですね。」
あははっと笑ってワインを口にする。そんな波多野さんのお父さんを前に私はやはり少し気まずくて笑顔を見せつつもワインを一口流し込んだ。
「雅さん。ワインおかわりもらいます?」
波多野さんが気付いてくれてグラスを手で促している。
「あ、はい。」
従業員さんを呼び注文を通すと廊下の方にチラリと目線を向けて少し前屈みになりながら私に言った。
「さっきボディーガードの方と廊下ですれ違いました。今日もオーラが出てましたね。」
「はは。そうだったんですか。今日は廊下に…。私いまいち何時も何処にいるのか分からなくて。」
「ん?ボディーガードの話してるのかな?」
「うん。」
すると波多野さんのお父さんが話に食い付いてきた。
「何とも高嶺家は優秀なボディーガードをお抱えになっているみたいですね。」
「はい。皆実直に良くやってくれています。」
フッと顔を変えて少し真剣な表情になると波多野さんのお父さんはこんな提案をしてきた。
「実はこのお見合いが決まってから私の方で考えていた事がありましてね。これから例えば雅さんと純が一緒になった場合なんですがその二人を護衛出来る様な凄腕のボディーガードを就けたいと考えております。友人のつてで各界の大物に就いた事もあるベテランのボディーガードを紹介して貰えそうなんです。」
─────えっ…!?
「各界の…それは凄いですね。」
「あの…誤解なさらずに。雅さんのボディーガードの方も優秀と思っています勿論。ただ経験と実績があるベテランの方がと考えたまでの話でして。」
「えぇ。言わんとしている事は分かっていますよ。大丈夫です。」
パンッと手を叩き部屋の隅まで聞こえる位の張りのある声で波多野さんが言う。
「あぁ、今のボディーガードと交代して貰えば良いんじゃないかな。いや、あのボディーガードの方がどうとかでは決して無いのですが僕としても大切な雅さんを妻に迎える訳ですから何かあってからでは困るなと思いまして。雅さんもそう思いません?」
「あ、えっ…と…。」
そんな話になるなんて予想もして無かった私は困惑し上手く言葉が纏まらない。
どうしよう…これは何て言ったら正確なの?
「納得です。」
お、お母さん?
「全くもってその通りです。」
ちょっとお父さんも何か言ってよ。
「波多野さんや純さんの雅を想う気持ちに胸を打たれました。その様に致しましょう。」
…っつ!?
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