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デートなのに
「で~。吞み会はどうだったの?」
翌日更衣室で一緒になった堺さんが朝から早速私に昨日の事を聞いてきた。
「はい。楽しかったです。」
「いや…それは分かってるのよ。私が聞きたいのは気になる彼の事。」
興味津々の顔を私に向けてくる。
「あっ、そっちですね。はい…久しぶりに会った彼は凄く素敵になってて。」
「うんうん。」
「それで自分でもちょっと怖いなっていう位な展開に直ぐなって…。」
「怖い展開って…なんだか変な事になっちゃったんじゃないの?」
「いえ、その逆です。友達のお陰もあって今度遊び…というかデートする約束をしました。」
「えーっ!やったね、高嶺さん!」
更衣室中に堺さんの張りのある声が響き渡った。
「ありがとうごさいます。照れる。」
「それでそれで、何時なの?デートは。」
「まだ連絡取り合って無いんで決まってはいないんですけど私としては早くまた会いたいなって思ってます。」
「そうだよね。なんか話を聞く限り2人良い感じな気がするよ。だって久しぶりに再会したのにもうデートの約束しただなんて彼も高嶺さんを想ってたんじゃないのきっと。じゃなきゃそうはならないってば。」
「えぇ?それは分からないですけどでも、そうだったら良いな。」
「早くデートの日程決まると良いね。2人は何処に行くのかな~。うふふ。」
まるで自分の事みたいにウキウキ気分で着替えを終えた堺さんは先に仕事場へ向かった。なんだか私のこの恋を側で応援してくれている様で凄く嬉しかった。私も着替えを終えロッカーをバタンと閉めた。けれどまた開けてみる。鞄の中に手を突っ込みスマホの画面を確認する。
だよね…。
昨日の今日だもんね。
泰幸君からのメッセージは入ってはいなかった。スマホを鞄に戻して扉を閉める。
はやる気持ちを抑えきれずついそんな行動に出てしまった自分が恥ずかしすぎたそんな瞬間だった。
だけど────。
その日の仕事が終わり帰り支度をしていた時だった。今日着たシャツを鞄に詰めているとふと中のスマホが振動しているのに気が付いた。着信の相手は泰幸君からでその名前を見たと同時に動揺して手元が狂いスマホを落としそうになった。
「もしもしっ、泰幸君?」
「あっ、いきなりごめんな。高嶺。」
その声は少し慌てている様にも感じた。
「どうしたの?」
「今大丈夫?仕事終わったの?」
「うん。今終わった所だよ。」
「なら良かった。いやさ、あれから高嶺と何処に行こうか沢山考えててさ。今大学の時の友達と居るんだけど新しく出来た春野駅のテーマパークのチケットが余ってるらしくてくれるって言われてるんだけど良かったら行かないかなと思って。なかなか会えない友達だから早めに返事しないといけなくて電話したんだ、ごめんな。」
「春野駅のテーマパーク気になってたんだよね。行きたい。」
「本当!良かった。じゃあチケットもらっとくね。」
「うん。」
「じゃあまた連絡する。仕事お疲れ。」
「ありがとう。」
そんな話になり2人は電話を切った。
ふふふ。
また含み笑いをしてしまう…はっ。
キョロキョロと周りを気にする私。また礼二が憎たらしい顔で私を見下している様な気がしてならなかった。
でも、正直泰幸君に早く会いたいのは私だけかと思っていたけど泰幸君は泰幸君で私とのデートの事沢山考えてくれてたんだなって分かって気持ちがホワッと温かくなった。
ソフトクリーム美味しいね~泰幸君。
あっ、高嶺。口に付いてるぞ…はい。取れた。
ありがとう泰幸君。
きゃ~っ!観覧車高いよ~泰幸君!
落ちないから大丈夫だって。あはは…。
どうしよう…妄想が止まらない~。
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