デートなのに

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日曜日。朝9:00に春野駅北口改札で───。 この前の吞み会よりも気合いを入れて今回はこの日を目がけて肌のケアは勿論ダイエットまでした。この前の皆での吞み会とは違い1対1、泰幸君と私だけの時間なのだ。当然私を目にする回数も多いだろうしなるべく完璧にしておきたかった。前回はヒラヒラのワンピースだったけれどテーマパークという事でパンツにスニーカーはどうしても必須になってしまう。なのでせめて上半身だけは可愛くしようと白いレースの入ったシャツに髪の毛はカールで巻いて白いシャツに会わせて白い大ぶりなお花の形のピアスを付けた。礼二の助言を素直に聞く訳では無いけれどメイクはまぁ…ほどほどに。 その礼二に今日の泰幸君とのデートの話は本当に本当に言いたくは無かったけれど後々あぁだのこうだの面倒臭そうだったから軽く伝えてしまった。そして前回のあの距離感よりももっと距離を取るようにと言葉を付け加えて。泰幸君との空間にほんのちょっとでも礼二の姿が映り込んだのならその時点で一気に冷めてしまうのは目に見えていた。 …っと、はぁ…。 玄関でしゃがみ込みスニーカーの紐を結び立ち上がると頭がフラフラしてしまった。私はシューズクローゼットに手を突きフラフラが収まるまで待っていると後ろから私を呼ぶ声がした。 「お前立ちくらみしてんのか?」 「あ…大丈夫だから。」 「用意した朝飯も食わないからそうなるんだろうが。」 「ごめん。帰ってきたら食べるから。」 「この数日間夕飯もサラダばっかり食べて俺はウサギに飯作ってるのかよって思ったぜ。」 「ダイエットしてたのよ。」 「そんな事だろうと思ってたけどな。全体的にほっそりしたみたいだが顔色悪くなってるぞ。メイクしてても俺は分かる。」 「えっ…やだ、どうしよう。あ、チーク…。」 鞄を開け化粧ポーチの中からピンク色のチークを取り出し付ける。 「また化粧濃くなるぞ。」 「これ位ならまだ大丈夫でしょっ。」 「日頃から規則正しい食事や睡眠が大事とされているのにお前はどっちも出来てない。サラダばっかり食べて夜も遅くまでテレビの音聞こえてくるしな。結果そうやって悪循環になるんだろうが。ダイエットして痩せたって不健康になるなら意味ねぇな。」 チークブラシを持つ手に力が入り礼二を睨み付ける。これから泰幸君と楽しいデートのはずなのに出発前から残念な程に気分を害してくる礼二に腹が立って仕方が無かった。けれど今ここで礼二と言い争っても時間が過ぎていくばかり。私は感情をグッと堪えて無言で外に出た。 「図星な事言われてふくれっ面になる所変わって無いなお前。」 「…。」 そんな私の後を礼二が追いかけて来る。私はわざと歩を速くして駅へ急ぐ。 「そんな急いだって泰幸君は逃げないだろ?」 「…。」 「はぁ…。完全にだな。」 春野駅へ向かう車内でも私は礼二を完全に無視していた。ダイエットしてカロリーが足りていないから余計にイライラが増していたのかもしれないけど。 春野駅に到着し私は礼二の事など気にせずにスタスタと1人で歩き出した。ホームの階段を下り改札が見えてくると柱の側に立つ泰幸君の姿が目に飛び込んできた。私は顔の横で控え目に手を振ってみる。するとそれに気付いた泰幸君も笑って、よおっと手を上げてくれた。まだ付き合っている訳でもないのに気分はもう恋人同士みたいだなぁなんて勝手に思ってみたりして。 「泰幸君おはよう。早かったんだね。待たせちゃったかな。」 「全然待ってないよ。今俺も来た所だし。」 「そっか。良かった。」 「高嶺なんか今日雰囲気違うな。」 「え?あ、かっ、顔?」 「ん?顔じゃなくて。あっ、パンツスタイルだからだな。歩くし乗り物乗るしな。」 「あぁっ、そっちね、うん。」 「パンツスタイルもスニーカーも似合ってるな。」 「ありがとう。」 「良し。じゃあ行くか!」 「そうだね!」 会って早々に服を褒めてくれやっぱり泰幸君はそういう所が素敵だと改めて思った。そして泰幸君のコーディネートも薄いミントグリーンのパーカーにGパン姿で爽やかな泰幸君にとても似合っていた。 「ここから歩いて10分位だから近いよ。」 「そうなんだ。」 「はい、チケット。」 「わぁ。写真位あるねこのチケット…後何か二枚仕立てになってる。あは。テーマパークのキャラクターが可愛い~。」 「そうだ。これ友達が言ってたんだけど受け付けで記念に写真撮ってくれてここに挟めるみたいなんだ。」 「そうか、だから挟める様に二枚仕立てになってるんだね。」 私はそれを聞いて泰幸君との写真を絶対にこの中に収めるんだとチケットをしっかりと手にしテーマパークへ向かった。
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