私の理想の両親

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私の理想の両親

私の両親は意外にも恋愛結婚。お母さんは家のホテルの一人娘だった為お婿さんが必要だった。気立ては悪くないお母さんだったけれど何故だか毎回相手に恵まれない日々を送り不思議に思っていた矢先、近所に住む仲良しな昔ながらの叔母さんから信じられない話を聞かされた。「貴方の事を妬んで悪く言っている人がいる。」と。当時結婚するにあたり全員では無いが悪まで個人的に相手がどんな風に周りに見られているかなどを知る為身辺調査の様な事をしたりする事があったらしい。その時お母さんや家そのものをやっかんでいる人間が周りに居たらしくその人達が酷い作り話を身辺調査に訪れた結婚相手に伝えていたという事だった。現にその叔母さんの所へも訪れたその人は「余所で妾の子と聞いたのですが本当ですか?」とか「何度も離婚されているのですか?」などという話をしていったそう。誰が言っているのかも分からずお母さんは落ち込む日々を送っていると新たな結婚相手候補がまた現れる。だが何時もの様に上手くはいかないのだろうと期待しないでいると彼は違った。「僕とお付き合いしてみてもらえませんか?」開口一番にそう言い放った。「正直に言います。僕は貴方の事を周りの方に聞いて回りました。ですがある一部の人達からは貴方の事を酷く罵るような話を聞いてきました。もしかしたらその時点でこの結婚の話は無かった事にしてしまいたいと思う人もいたでしょうが僕はそうは思いません。人が貴方をどう言おうか僕は自分で見たもの感じたものしか信じません。今目の前に居る貴方からはどうしても周りの人達が言う様には一切見えないんです…って何の根拠も無いですが。」そんな風に言ってくれたのが私の今のお父さん。母は自分を信じてくれたお父さんに救われ心を掴まれたそう。そんな2人は歳を重ねた今でも仲良しで私は密かにそんな両親に憧れている。でもちょっと忙し過ぎなんだけど。それを除いたら今より最高かな。 23歳。大学を卒業して社会に出たばかりの私にまだ結婚なんて2文字は重たいし遠いいのかもしれない。けれど身近にそんな馴れ初めを経て仲良くしている両親を見ているとやはりこういう夫婦でありたいし明るい家庭を持ちたいと想像してしまう。お父さんはホテルの一人娘としてお母さんを支えているしお母さんも自分を支え仕事を一緒になって熟してくれるお父さんをリスペクトしていてお互いが上手く噛み合っている。そしてお父さんは娘の私から見ても家庭を大切に出来る温かい優しいお父さんだ。優しい…泰幸君みたいだ。もし私が泰幸君と結婚なんてして家庭を持てたらきっと泰幸君は私のお父さんの様に私や子供に優しくしてくれて家庭を大事にしてくれるんだろうなと思う。私がホテルを継ぐ事になるだろうとは思うけどなるべく仕事をセーブして私は家族との時間を増やしたいな。それで寂しくないように子供は沢山産んで休日には泰幸君の運転でキャンプに行ってそれから…。夢が膨らむなぁ。 そんな事を頭に描きながらいた私は写真をキャビネット棚に戻し自分の部屋に向かった。 部屋に入りスマホを手にし泰幸君にお詫びの連絡をしようと電話帳を開きボタンを押す。 プルルル…プルルル…プルルル…。 泰幸君は気が付かないのか移動中なのかなかなか電話に出てはくれなかった。私は諦めて電話を切ろうとしたその時だった。 「…だからお願いしてるじゃないですか。」 ん? スマホを耳から離そうとした時遠くの方から話し声が聞こえてきた。私は掛け間違えたかと焦り画面を確認してみたけれど泰幸君の携帯で間違えなかった。でもその声は初めて耳にする切羽詰まった様な泰幸君の声だった。 「えぇ…はい。じゃあまたご連絡します。」 相手の声が聞こえて来ないのは多分泰幸君は家電で電話をしている様子だった。相手との電話が終わった泰幸君はその後慌てた様に私の電話に出た。 「もっ、もしもし!?高嶺!」 「あっ、泰幸君。」 「電話くれたんだな、ごめん。いや、今俺もその…他の人と電話してて。」 「うん。全然っ、こっちは大丈夫だよ、、」 「あぁ…いや、家電で話してて高嶺には掛け直そうと思ってたら手で画面に触れちゃったみたいで。」 「そうだったんだ。」 「その、何か変な会話だったよな今の。」 「会話?えっと…良く聞こえ無かったよ。はは。」 私ははぐらかす。 「そうか。あ、体調大丈夫か?」 「今さっき帰って来てもう大分落ち着いたよ。今日は私の管理不足で折角の楽しいデートだったのに本当ごめんね。」 「いや俺は気にして無いし高嶺も気にすんなよ。また何時でも行けるからさ。」 「うん。ありがとう泰幸君。そう言ってもらえると心が軽くなる。」 「とりあえず今日はゆっくり休めよ。」 「分かった。あっ、それと。礼二が何だか色々とごめんね。」 「俺も何かムキになったよな。まぁあの人に言いたい事は言えたけどまた顔合わせたらどうなるか正直俺も分からない。」 「だよね。うん。とりあえず今日は迷惑かけてごめんね。」 「本当気にすんなよ。また誘うからさ。じゃあな。」 「またね。」 そう言って泰幸君との電話を切った。 やっぱり泰幸君は優しい。
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