片想い

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俺が目の前に今立っているこの家は昔俺が高校生だった頃晩飯を食べに来させてもらっていた小百合の実家だった。俺の両親も雅のとこと同じ様に仕事が忙しい家庭だった為母さんの幼なじみである小百合のお母さんに食事のお世話をしてもらっていたのだ。 この前の電話で病気のおばさんの体調がと聞いていたのと副作用でとの事だったのでサラッと流し込める様にゼリーやプリンをお見舞いに買いそれを右手に持ちながらインターホンを鳴らすと小百合が出た。 「はい。あ、礼二ね。今行くわ。」 少しすると玄関扉が開き数年ぶりに見る小百合の姿があった。小百合は俺よりも身長は低いものの手足が長くスラリとした体系をしていて顔立ちは雅よりも大人びている。 「うわぁ。暫く見ない間に男っぷり上げたわね。私より2つ下だけど上に見える。本当大人になった。」 「老けたって事?」 玄関をくぐり靴を脱ぎながらチラッと小百合の方を見て言う。 「違う違う、格好良くなったのよ礼二。」 「ふ~ん。ま、良いけど何でも。」 「素直に喜べば良いのに。変わってないね。そういうとこ。」 「…。」 「じゃあ手荒ってもらってからお母さんの部屋行こう。」 「これお見舞い。」 「ありがとう。冷やしといた方が良いかな?」 「おばさんも食べられる様にサラッとしたゼリーとプリン買って来た。」 「お気遣いありがとう礼二。じゃあ冷蔵庫だね。」 お見舞いを小百合に渡すと洗面台を借りて手を洗いおばさんの部屋に向かった。 ───────────。 静かに襖を開けて部屋に入ると目の前にベッドがあり近付いておばさんの顔を覗き込むとおばさんは眠っている所だった。俺の記憶に残るおばさんのハツラツとした姿とは大分かけ離れ布団の上に置かれた手首や顔は骨が浮き彫りになってしまう位に痩せ細り込み上げる気持ちに我慢出来ず目を反らしてしまった。すると後ろから部屋に入って来た小百合が俺の肩に手を置き「ありがとう礼二。」と一言言ってくれた。俺は深呼吸して少し落ち着くと一旦部屋を出てリビングに通された。懐かしいリビングルーム。ダイニングテーブルも変わらず同じ物が使われていていつもここに座りおばさんと小百合が直ぐそこのキッチンで夕飯の支度をしてくれていたっけ。思い出に浸りながらぼんやりとしていると小百合がコーヒーを出してくれた。 「あぁ…ありがとう。頂きます。」 「どうぞ。」 このコーヒーカップもあの時のまま。 「礼二さ。驚いたでしょ?お母さん。」 「うん…。正直別の人かと一瞬思った。」 「無理も無いよ。あんなに痩せちゃったらさ。」 「副作用なんだよな?」 「そう。副作用で食欲無くなるから食べられないの。だから幾ら私が栄養バランスの取れた食事用意しても少ししか口に出来なくて。」 「おばさんの病気は何時から?」 「4年前だったかな。私が結婚して次の年だったから。」 「そんな前から。じゃあ小百合はその間ずっと看病してたのか?」 「うん。新居と実家を行ったり来たりしてね。最初の頃はお母さんも病気を患ってはいたけど元気だったから泊まらないで帰ってこれていたの。だけど途中から急に弱ってきちゃって、ほら、家お父さんが早くに亡くなっててお母さんが1人じゃ生活出来ないから私が暫く旦那さんと離れてここにお母さんと暮らしてるの。今はたまにしか帰らないわ。」 「旦那さんとこの家で一緒に住めば良いんじゃないの?」 ふと何の気なしにそう口走った。すると小百合は俯き重たい口を開いた。
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