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それからおばさんの様子を伺いに再度部屋に入ったがまだ眠っていたのでその日は諦める事にし部屋を出た。だけど小百合との再会を果たし俺は満足感でいっぱいだった。ただ小百合から聞いたあの話が頭に残っていて多分家に帰りベッドで目を閉じてもその話の事を考えてしまうんだろうと思っていた。
「今日はお見舞い来てくれてどうもありがとう。お母さんも起きてたら良かったんだけど。」
小百合が車の前まで見送りに出て来てくれた。
「とりあえずおばさんとそれから小百合の顔が見られて安心したよ。小百合も体調崩すなよ。話したくなったら電話くれても良いしな。」
「礼二って見た目はクールなのに中身は優しいからそのギャップに昔びっくりしたの思い出した今。」
「そ、そうだったのか?」
「うん。本当にありがとう礼二。後で目が覚めたらお母さんにも伝えておくわ。」
「分かった。じゃあな。無理はするなよ。」
「ありがとう。」
俺は最後迄手を振る小百合を気にしながら車を出発させ帰路についた。
「あっ、お帰り。」
「お前何やってんだ?」
お世話になった人のお見舞いに行くと言って外出していた礼二が帰って来た。
「見れば分かるでしょ?夕飯作ってるの。礼二の分も勿論あるから大丈夫よ。」
「いや。俺は自分の分は自分で作る。」
「そんな遠慮しなくて良いってば。」
「遠慮では無い。」
「えぇ?」
「身の安全の為だ。」
「何それ。酷くない?もおっ。」
そんな意地悪を言いながらサッと手を洗い腕まくりをした礼二が私の隣に立つ。引き締まった腕が露わになり私の目はおよぐ。ふとカウンターの上にさっき礼二が手を洗う時に置いたスマホが点灯しているのが見えた。『今日は顔が見られて嬉しかった。ありがとう礼二。』そんな文章が入っていた。私は私以外の人で礼二と呼び捨てにする人を知らない。礼二のお父さんやお母さんはそう呼ぶけれど他の人は誰一人分からなかった。そうでなくても礼二はプライベートを公にしないから謎は深まるばかり。だから私は気になって。
「今日会って来た人って礼二とどんな関係なの?」
私はレタスを洗いながら聞いてみる。
「高校の頃お世話になった母さんの幼なじみ。」
礼二もまな板を出し人参を切り始める。
「お世話に?」
「あぁ。晩飯食わしてもらってた。お前と同じく俺の両親も仕事で忙しくしていたからな。」
「そうだったんだ。」
「病気を患ってる。だからお見舞いに。でも結局ずっと眠っていたから話はしなかったけどな。だから娘の小百合と話して帰って来た。」
「娘さん…。」
さっきのメッセージを送ってきた女性だ。小百合と表示されていた。すると礼二は人参を切る手を止めて私の方を向き言った。
「お子ちゃまのお前よりも遙かに大人で美人の女性だ。」
ニヤリと笑う礼二。私はムスッとしながら言い返す。
「はいはい。そうですかっ。すみませんね、色気も何も無くて。」
「そこまでは言って無い。」
「言ったも同然よっ…たく、失礼よね今日も。」
「そりゃどうも。」
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