片想い

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「小百合さんて礼二と同じ位なの?」 「年齢か?」 「そう。」 「少し上。」 「実家暮らしなの?」 「今は…そうなるな。」 「結婚はしてる?」 「してる。」 「子供は?」 カタッ。 礼二は動かしていた包丁を置き少し強めの口調で私に。 「お前さっきから質問ばっかだな。」 「あっ、、ごめん。」 「サラダ進んでねぇぞ。手動かせ。」 質問攻めで礼二の気分を害してしまった私はその後は一切話し掛ける事はせずに黙々とサラダを作っていったのだった。 ────────。 途中から礼二が参加してきて手際の良い礼二がちゃっちゃかと野菜を切りカレーを作ったので私は結局サラダだけ作って終わってしまった。私と礼二はテーブルに並べたカレーとサラダをあっという間に平らげるとそれぞれ自分のお皿をシンクで洗いその日はお互い顔を合わせる事は無かった。 …お風呂でも入ろう。 暫く部屋でくつろいだ後私は下へ行き脱衣所の棚を開けこの間仕事帰りに買って来たボディーソープを手に取る。新しい香りの物でトロピカルフラワーと書いてある。どんな香りなのか楽しみにそれを持ちお風呂場へと入る。扉を開けると湿ったモワッとした空気とソープの香りを感じ先に礼二が済ませたのだと分かった。手にしていたボディーソープを鏡の前に置き私は最初に体を流して湯船に浸かった。 手足を伸ばし頭を浴槽の端に乗せ天井を見上げながらさっきの礼二とのやり取りを思い出していた。お世話になった人の娘さんで年上の美人な小百合さん。そして私と同じく礼二と呼び捨てに出来てしまう存在。結婚はしていてだけど私があの質問をしたら礼二は少しムキになったのは確かだった。『子供は?』…。礼二のプライベートが分かってきたと思ったけどまた謎が深まり分からなくなるそんな複雑な気持ちだった。 そんな事を考えながらいた私はお風呂場に入ってからずっと漂うこのソープの香りが気になっていた。ふと体を起こしシャンプーの並べられている棚に目をやると黒いボトルに入ったメンズのボディーソープが置いてある。 バスタブから出てポンプを押して少しだけソープを出してみる。これだ。礼二の香り。匂いを嗅いだその瞬間私は頭に礼二の顔が浮かぶ。ついさっき迄こうして一糸纏わぬ姿で私と同じ様にシャワーを浴び浴槽に体を沈めていた礼二。その浴槽に今は私が入っている…なんかっ、はっ…ジャポン! 鏡に映る自分が急に恥ずかしくなって両手で体を隠す様にしながら浴槽に飛び込む。そして前に礼二に触れられたうなじに手を当てると更に鼓動は早くなり新しく買ってきたボディーソープの事など忘れ早く上がってしまいたいと思うのであった。
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