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引っ越しか。荷造り…えっと住所も変わるからその手続きに…初めての事で分からない事沢山ありそうだな。礼二に聞いてみようか。
ふとあの日の光景を思い出す。
礼二の細くて長い指が唇に触れ無防備な私の肌を何度も滑っていったあの日を。
ボウッと壁を見つめながらいた私はあの時の感覚を取り戻したみたいに体が火照りなかなか収まってはくれなかった。下に礼二が居るのにこんな風になるなんて。次の瞬間両腕でこの火照り上がった体を鎮火でもするかの様に自分でギュッと抱き締めた。
息も少し乱れながらもそうする事でなんとか収まっていった。
────────。
見つめ合った後礼二は私の体に丁寧な手つきで触れ敏感になった私の肌の至る所に唇を落とす。
やがて礼二は下へと下りていき顔を埋め優しくなめ上げる。
ビクッと反応を示せばその箇所をいつまでも愛でてギュッと白いシーツを握り締めながら私は果てていく。
「…っはぁ。」
木目調の天井柄が快楽と共に溢れ出た涙で歪んで見えた。
その時の私は体を張って精一杯礼二と向き合おうとする一方でだけどこの胸が切ない程に礼二を強く求めていた。
私は目をつぶり礼二だけを想う…フワッ。
肌を覆ってくるそれは礼二ではなく礼二が私に掛け布団を掛けた感触だった。
私は困惑しベッドの横で背中を向け座っている礼二に呟くように声を掛ける。
「礼二…?」
すると私に背中を向けたままで。
「服着ろ馬鹿…。」
そう言って部屋を出て行った。
リビングで脱ぎっばなしだった私の服を手にし再び部屋へ入って来ると掛け布団の上にパサッと置き礼二はそのまま何処かへ出掛けてしまった。
ポツンと静まり返った部屋。
一糸纏わぬ姿の私は礼二の残り香のするこのベッドで今、その礼二に抱かれようとしていた…訳で。
こんなに胸がキュッとなっているけど最初はそんな気持ちになるなんて思って無かった。
だって遅めの思春期を迎えたみたいな私が礼二に向けての反発だったから。
けど…。
そんな風に思っている自分が思い込みなんじゃないかと自分自身に問いかける。
それはつまり泰幸君と同様に私は礼二を想っているという意味。
いや…。
私は泰幸君が大好きで彼に会うだけで胸は高鳴り信じられない程に活力が込み上げてきたあの感じは嘘じゃ無い。間違い無く泰幸君は私の心に居る。
だけどシーツに頬を当ててみれば香るその匂いに私の体は再び火照りを覚えてしまっていた。
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