迷い

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あの日あんな風に礼二に触れられなければ良かったのかもしれない─────。 ここ数日間、私はそんな事を思っていた。私の泰幸君を想う気持ちにいつの間にか溝が出来て礼二が入り込んでいた。どうしてそんな事になってしまったのか泰幸君にプロポーズされた後自分なりに考えてみた。 昔から毎日側に居て礼二が私をからかうからそんな礼二の振る舞いに心を許し過ぎて私が勝手に礼二に公私混同してしまっただけなんだと。礼二に対して想いがあるかもしれないとか礼二を深く知りたいとかそんな風に考えてしまった。小百合さんの件では1人で勝手に傷付き泣いた。だけど礼二は高嶺家が雇っている私のボディーガード。私を護ってくれさえすればそれだけで良い。立場はお互いはっきりしている。 泰幸君だけを見よう。 最初からそうだった様に。 結婚の事も自分なりにもっともっと考えよう。 きちんと泰幸君に向き合っていく為に。 ─────────。 そして泰幸君は私のシフトに合わせるかのようにその後も頻繁に食事に誘ってくれた。泰幸君は色々なお店を知っていたので毎回違うお洒落なお店に連れて行ってくれてそれはそれで楽しかった。けれど私の決心はまだ固まらないままでいた。この日も何時ものように泰幸君と私はお店で食事をしていた。 「そう言えば最近菜々子と会ったりしてる?」 「菜々子?うん、この間家に来たよ。どうかした?」 「いやっ、、あっ、ほら高嶺と仲良しだから会ったりしてるのかなと思っただけ。」 「…あ、そうだったんだ。」 「そうだ、また高校の皆と集まりたいよな。今度は先生にも声かけたりしてさ。」 「うん。良いね。」 「高嶺。今日も仕事忙しかったんじゃないの?ちょっと疲れてるよな?」 泰幸君は私の顔をテーブル越しに覗き込む。 「そんな事無いよ。忙しかったけど元気だよ。」 「最近俺誘いすぎだな。ごめん。今日は食事したら早く帰ろう。」 「大丈夫なのに。」 「いや。健康第一だからな。だから今日は帰って早く寝てよ。」 「うん。分かった。」 泰幸君が私を気遣ってくれたので今夜は早めにお開きになった。 私は食事の後に鞄を手にしお手洗いに行った。手を洗いハンカチを鞄から取り出していた時スマホが中で点滅しているのが目に入った。パパッと手を拭いてスマホを確認するとお母さんからの着信だった。転勤の詳細連絡だけだろうと思い電話に出たのだが…。
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