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病院に着き一階で受け付けを済ませるとエレベーターで上に上がり長井さんを廊下のベンチシートに座らせて私だけ病室に入った。ベッドに近付き上から顔を覗き込むと今日も顔色の良い礼二が居た。
「礼二。来たよ。」
「…。」
「休憩の時にね、礼二の煙草吸ってみたんだけどむせちゃって上手く吸えなかったよ。今度お手本見せてね。」
「…。」
「えっ?お子ちゃまのお前は吸うなって?失礼しちゃうわ。あっ、そうだ。まだ言って無かったよね。今廊下に居るんだけど代わりのボディーガードやってくれてる長井さん。礼二より少し年上だったかな。でねすっごい優しくてしかも私の事女性扱いしてくれるの。鞄持ちましょうか?とか言ってくれて。ボディーガードなのにね。」
「…。」
「あぁ、今やばいって思ったでしょ?分かるんだからね。目閉じてても。ははは…。」
私はこんな風にいつも一人言の様に礼二に話し掛けながら今日あった出来事などを報告していた。相づちも打たなければ話だってしない。だけどこうする事できっと礼二に届いていると思いたい。信じたい。
もっと礼二と話していたかったけど仕事が推して面会時間がもう終わってしまう。
今日も礼二は目を覚まさなかったな…。
待つのってこんなに不安でしんどいんだね。
喧嘩したままなんだし続きするんだから早く起きなさいよっ。
そんな風に思ってみたりする。
ほんの少しの時間だったけれど今日はもう帰って明日また来る事にした。
──────この子を俺が護るのか。
まだあどけなさの残る顔。華奢な肩幅。世間の汚い物をまだ見ていない純粋な瞳。
ザザァッ、、クッ、、雅は無事かっ?!
何だあの暴走車っ、ナンバーは覚えた。
…にしても手がっ、痛てぇ。
えっ?食べろって?口…あぁ、、甘い…。
ホッとするな。この甘さに。
キャラメルよりも甘いこの笑顔に────。
目の前に立つ女はもうあの頃のあどけなさは無く俺と対等な大人の女だ。
引き寄せた俺の手に収まる膨らみは自分が女なのだと知らしめるかの様にそこにある。
目線を上げれば僅かな手の動きにさえも顔を歪ませ瞳を潤ませていく。
俺はただただそれを見つめる。
時折漏れる吐息に耳を傾けているとスウッと指が吸い込まれた。
柔らかな弾力のある感触に浸っていると直ぐに鋭い痛みに襲われる。
けれどそれは俺の理性を瞬く間に崩していき気が付けば雅を求めていた。
このまま抱いてしまおうか…。
俺だけのものにしてしまいたい。
あの笑顔を見せてくれた日から雅を見る度ずっとそう思っていた。
雅に触れたい──────────。
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