君を想って

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「な、何?」 ガサガサ。 「腹減った。プリン食うぞ。」 私からプリンの袋を奪って顔の横に持ち上げた。 「!?あ、忘れてた…はは。」 礼二はベッドに私はベッドの横にあった椅子に腰掛け買って来たプリンを出してそれぞれ食べた。カスタードとチョコの二種類で二人はカスタードを選んだ。トレーニングでカロリーを消耗したのか礼二は間髪入れずにチョコ味を口に運び出した。あっという間に瓶は空になり箱に入った手付かずのもう一つのチョコ味を見ている。 「足りないの?私の分食べて良いよ。」 「お前食わないのか?」 「良いよあげるよ。そもそもプリン二つも食べ過ぎだから女子は。」 「そうかぁ。それもそうだな。中にトロットロのチョコが贅沢に入ってるプリンは確かにカロリーも高めだしな。そうかぁそうかぁ。残念。じゃあ俺が食べ、、」 礼二の隣に置かれたプリンの箱からヒョイッとチョコ味のプリンを掴み上げた私は直ぐに蓋を剥がして一口頬張った。 「美味し~っ!最高!」 「食べないんじゃ無かったのかよ。」 「気が変わったのよ~。」 「こら、よこせっ。」 「キャッ、やだよ~。」 礼二に取られない様にして立ったり座ったりしながら逃げ惑う。 「ギャッ!?」 逃げ惑う最中椅子の足が引っ掛かり倒れる手前で側に居た礼二にしがみついた。手にはプリンを持ったままで。 「…ごめんっ。」 「いや…。」 私はしがみついた体を離し礼二と向き合う。すると礼二があの夜の話を始めた。 「刺された夜。意識が朦朧とする中で動けなくなった俺はお前が俺を置いてちゃんと逃げたか気になってた。」 まだ礼二の首に巻き付いたままのプリンを持った手にギュッと力が入った。 「正直、刺されたのなんてこの仕事やってて初めてで想像を絶する痛みに言葉を失った。」 「うん…。」 「けど今お前がこうやって変わらず俺の前に居る事、そして俺も死なずにここに居られる事。今のこの状況こそが俺はまだ意識不明で夢を見てるんじゃないかと思ってしまう。俺はあの時死を覚悟したからな。」 「そんな死なんて。止めてよ。確かに意識不明が続いて心配だったけど。」 「夢を見てた。ずっと…お前の。」 「あぁ。私が礼二にギャーギャー言ってたって言う夢ね。」 すると突然ふわっとした柔らかな笑顔を見せて礼二は言う。 「言って無い。」 「え…?」 「早くこっちに戻ってお前に…みたいなそんな夢だった。」 「そうだったの。どんな夢だったのかな。」 私が妄想を始めると礼二はクスッと笑い私の顔を見つめる。 「今日のアイメイクは紫か。」 「新作買ったの。変…かな。」 「似合ってる。」 「珍しく褒めた。あの礼二が。」 「けど…。」 「?」 「少し濃いな。」 礼二に引き寄せられて私の体が礼二の腕の中に収まると顔を両手で包まれて瞼の色を舐め取られた。 「…っまた、また濃かったの?鏡見たのに何回も。」 「それと。」 礼二の顔が下にゆっくり下りてきたと思うと唇が途端に捕まってしまった。 「プリン付けて子供かよ。」 「はっ。」 思わず手で口元を押さえる。 「こんな夢だった───────。」
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