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情なのかな
礼二が私に触れるのは私をからかいたいだけだからなのかな。だけど毎回私に触れる手は丁寧でそこからは優しさしか思いつかない。礼二が躊躇無く私に触れるのは私をまだ子供扱いしてるから?貴方がそうやって私を惑わせると私は…。
数日後。礼二は退院した。
意識不明から奇跡的な回復を見せて先生も看護師さん達も驚いていた。返って病室で筋トレしていた事が良かったのかも…なんて冗談を言っていた。
「お帰り。礼二。退院おめでとう。」
仕事から帰って来た私はソファでくつろぐ礼二に言った。
「早いだろ。退院。やっぱり頑丈に出来てるからな俺の体。」
「先生達の懸命な処置のお陰だから。」
「あぁそうかよ。」
するとお母さんがリビングにやって来て話に加わる。
「あ、お帰り雅。それにしてもさっき言ったばかりだけど回復してくれた事が何より嬉しいわ。しかも後遺症も無く傷口が綺麗になれば元通り生活出来るんだものね。本当良かったわよ。」
「ありがとうございます…あの今ちょっと話しても大丈夫ですか?」
「えぇ。どうかした?」
「奥様にはまだ詳しくお伝えしていなかった事がありまして。雅様の転勤についてです。」
「あぁ、転勤ね。」
「はい。雅様のスキルアップの為にとの事で私が奥様に打診したのですが実はそれともう一つ理由がありました。」
「?」
「雅様の身の安全です。」
「ちょっと待って。転勤と身の安全がどうして結びつくの?」
「雅様には現時点、惹かれ会っているお相手が居ます。そしてその方から結婚を申し込まれております。ですが私が独断で調べ上げた結果彼は過去に当時付き合っていた彼女と金銭トラブルがあったという事が分かりました。そして彼の家には借金もあります。高嶺家に悪影響を及ぼしかねないと思い慎重に計画を進めていこうと奥様と雅様にはあえて内緒で計画を実行しました。転勤と言う事にして二人の間を遠ざければお互い距離に負けて気持ちも冷めるだろうというのが狙いでした。奥様には転勤が落ち着いたらお話しようと思っていました。雅様はもう全て知っております。少し理解も示して下さいました。私が雅様の為とはいえ少し暴走してしまったと反省もしております。」
「そうだったの礼二君。いや…それを聞いて、ありがとう。良くやってくれたわ。の言葉しかないわ。」
「私も最初は激怒してたし礼二が信じられなくなったんだけど話聞いたらこんな事情があってさ。」
「でも雅のその想いを寄せてる彼は返事待ってるんじゃないの?」
「うん…。」
「礼二君が調べてくれて後になって金銭トラブルが分かった訳だけど雅は彼という人間に惹かれたのよね。」
「だから悩んでる。私は彼を人として、男性として好きになった。だけど過去のトラブルとか耳にしてしまって彼が私に近付いたのはお金が目的なのかなって。」
「そうね。情が入ってしまっていると私達が何やかんや言えない部分はあるのよね。礼二君もそう思わない?」
「はい。そうですね。」
「雅。もう少し色々考えてみる?」
「うん。そうさせて。」
礼二がお母さんに泰幸君の事を打ち明けた事で私は肩の荷が下りたようなそんな気分だった。とてもすっきり…と言うか。
ブブブ…。
鞄の中のスマホを手に取り階段を上がりながら泰幸君の着信に出る。
「もしもし。」
「お疲れ。今家かな?」
「うん。今帰った所…パタン。部屋着いた。」
「そっか。あのさ明日の夜って会えないかな?」
「明日の夜は仕事で少し遅くなるんだ。」
「そうだよな。明日なんて急だよな。じゃあ明後日は?」
「明後日は遅番なの。来週とかなら…。」
「来週!?早く会いたいんだけど。あっ、いや来週にしよう。はは。」
一瞬泰幸君が怒った様に感じたけど私が礼二に掛かりっきりでなかなか会えなかったからそのせいだよねきっと。
「じゃあまた来週日にち分かったら連絡もらえる?」
「うん。連絡するね。じゃあ。」
今度会う日にそれとなく泰幸君に色々聞いてみないとな。
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