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それにしてもお母さんってこのホテルを継いできてるだけあって…というか普通に母親目線なだけだったのかもしれないけどね。さっきの私への言葉は。私が過去に金銭トラブルを起こしたり家に借金があったりする人に想いを寄せているっていうのにそればかりを責めるなんてしなくてきちんと私の気持ちを大切にしようとしてくれた事が私は嬉しかった。私の結婚相手になるかもしれない人がこの高嶺家に悪影響を及ぼすかもしれないというのに。普段仕事ばかりでろくに家に居なくて母親らしい事も半分も熟していないけどお母さんは私のお母さんで良かったなって今になってそう思った。
後日私は来週の都合の良い日を泰幸君に連絡して予定を合わせてもらい約束をした。護衛の方はまだ本調子では無い礼二に変わり長井さんが引き続き就いてくれていた。
「来週会うんだってな。」
一人暮らしの礼二は本調子になる迄家には帰らず私と同様に斉木さんにお世話してもらう事になっていた。そんな礼二が廊下ですれ違った私に声を掛けてきた。
「長井さんに聞いたんだ。色々聞いて自分の中で答え出ると良いんだけどね。」
「あぁ。」
「礼二は傷口はどんな感じ?」
「俺も来週抜糸する。もう完治に近いな。大きく横に切られた訳では無いから傷口もそこまでデカくない。」
「そ?なら良かったよ本当。でもやっぱり傷を残してしまった責任?は感じてるのよ私。」
「はぁ…責任ねぇ。」
「いくらボディーガードとはいえ人の体に傷はなるべくつけたくないから。」
「なら。一生お前の側に居させろ。」
「え?」
「それが責任の正しい取り方…だろ?」
「い、良いわよ!私の側で一生ボディーガードしてよ。護衛してよ。」
「…ふっ。」
「何よ。」
「言ってみるもんだな。こんな事…。」
「ん?良く分からないわ。」
「こっちの話。それより風呂先入るぞ。」
「どうぞ。怪我人優先ですから。」
そう言って礼二は私に背中を向けて行ってしまった。
私はその背中を見つめながらさっきの礼二の言葉の意味を考えていた。
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