情なのかな

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耳に当てたままになっているスマホから雅が泰幸と行き先の話をしている様だった。とりあえず瞬時に状況を察知した俺は雅との通話を切らずにタクシー乗り場へと走って向かう。 ─────────。 「笹目山の家の別荘に行って二人で今後の話をしよう。時間はたぁっぷりあるんだから。」   泰幸君は穏やかなでもクセのある口調でそう言った。 笹目山の別荘。行き先が分かると私は。 「に泰幸君の別荘があるなんて知らなかったな。の別荘の住所とか入れようか?」   鞄に忍ばせているスマホに向かって顔を泰幸君に不審に思われない程度に傾け笹目山をわざと連発した。後は住所を何とか聞き出せたら。 「住所?いらない。頭に道が入ってる。」 「あっ、そ、そっか。」 「何か企んでる?」 「企んで無いよ…。」 私は鞄をギュッと掴む。 「だって俺に連れ回されてる立場なのに親切だからさ。なんか違和感ある。」   「泰幸君、ほらっ、運転してるからナビ入力してあげようかなって思っただけだよ、、」 私の作戦を見抜かれそうになり焦る。 「ふぅ~ん。そっか。高嶺はこんな時でも優しくてお人好しなんだな。」 「優しくてお人好し?」 「だってそうだろ?高校の頃、文化祭の実行委員の奴が一人急遽家の事情で辞退する事になった時も頼まれて断れなくて引き受けてたし、先生の授業の手伝いもやってたりしてたよな。周りは面倒くさがってやらない様な仕事でも高嶺は何時も笑顔で熟してた。」 「あれはその。困ってたから…。」 「困ってたからか。じゃあ高嶺。俺の事もその寛大な心で受け止めてくれよ。困ってるんだよ凄く。父さんは病んでいくしそれを支える母さんももう限界なんだ。」 「…。」 「ま、別荘に着いてからまた話そう。今後のを。」 ──────────。 「運転手さん。笹目山迄行って下さいっ!」 「はい。」 笹目山の別荘だな、聞こえたぞっ。 俺は以前泰幸の調査を行ったある筋に電話を掛け早急に別荘の場所を突き止めてもらう様に手配した。場所が分かり次第裏道を通って何とか先回りをしたい所だがかなり出遅れてしまっているので挽回するのは難しい。でも泰幸の手が下る前に何としても雅を救出しなければ。 すると間もなくしてスマホにメッセージが入ってきた。○○県○○町笹目4-5-…。    すみません、この番地にお願いします。急いで下さいっ。 柄にも無く取り乱しているのを自分でも自覚していた。 俺が行くまでどうか何も起きないでくれ。もし泰幸が雅を傷付けでもしたらその時は…。 俺も何するか分からねぇな。 ─────────。  
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