新天地

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礼二の方も理由を話すと了承してくれて堺さんの待つ席に来てくれた。そして三人揃った所で店員さんを呼び最初私と堺さんは生ビール、礼二はウーロン茶を注文した。 「堺さん。改めましてこの間の件では助けて頂きどうもありがとうございました。」 「そんなそんな、私は大した事何もしてませんよ。」 堺さんは顔の前で手をブンブンと振る。 「でも高嶺さんのあの彼があんな事する人だったなんて私も裏切られた気分でした。そうと分かっていたら高嶺さんを彼の元へ行かせなかったのに。私も何だか高嶺さんに申し訳ない気持ちが少しあるのよね実は。」 「そんな風に思わないで下さいよ堺さん。だって泰幸君が豹変するなんて私も知らなかった事ですしあの時点では誰もが優しい爽やかな泰幸君だと当然の様に思っていたはずですから。」 「そう…ね。」 「お待たせ致しました~!生ビールとウーロン茶です。」 しんみりとしてしまった時にタイミング良くお兄さんが活気ある声でドリンクを運んで来た。私はまとめて中央に置かれたドリンクに手を伸ばし堺さんの前に差し出す。 「堺さん!この通り私は傷一つ無くピンピンしてます。済んだ事は忘れて今日は吞みますよっ!」 「そうですよ。私からもそうして下さるとありがたいです。吞みましょう。」 「うん…分かった。送別会だもんね。じゃあ気持ちを切り替えて。高嶺さんの門出に乾杯!」 カチンと三人でグラスを打ち合わせて堺さんも私もグビグビと喉に流し込んでいく。ふと隣に座る礼二を見れば何時もよりも優しい目で私を見ていた。目が合うとフイッと顔を戻し私は生ビールを吞み続ける。すると礼二がメニュー表を手にし堺さんの前に開いて置いた。 「堺さん。この中で嫌いな物とかありますか?」 「う~んと…特に無いかな。あっ、焼き鳥は絶対に食べたいわ。」 「分かりました。焼き鳥を含めこちらで適当にチョイスして注文しておきますのでどうぞ会話を楽しんでいて下さい。と言っている間にもうビールが空ですね。頼みますか?ビール。」 「あら、本当だわ。とっても気が利く方なんですね。しかも格好良いし。」 「堺さんもう酔ってます?礼二が格好良く見えるって事は酔っぱらってる証拠ですよ。」 「雅お嬢様。少々言葉が過ぎるのでは?」 「あらそう?」 「雅お嬢様ももう酔いが回られたんですね。弱いご無理はなさらないで下さい。」 「よ、弱くないし。吞めるし!」 「まったく。負けず嫌いですね。」 「礼二が吞めないからって嫉妬しないでよ。あ~美味しい。冷えたビール最高!」 「それは良かったです。私は帰ったら旦那様に頂いた年代物のワインを楽しむ事としますのでどうぞ雅お嬢様は沢山ビール呑まれて下さい。」 「そっちだって負けず嫌いじゃない…ったく。私よりも年上のいい大人がさ~。」 「ぷっ、、」 私と礼二のやり取りを目の前で見ていた堺さんが吹き出した。 「堺さん、笑いましたよね今。あ~恥ずかしい。こんな所見られて。」 「面白いわ。二人の関係ってこんな砕けた感じだったなんて思って無かったから余計に。あぁ言えばこう言うって流れが最高ね。仲良しで羨ましい。」 「やめて下さいよ~。一つも羨ましく無いですからっ。」 すると今度はじっと観察する様な目で私達を見てくる堺さん。 「あなた達二人ってなんだか…みたい。」
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