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握っていたジョッキグラスを思わず落としそうになる。
「なっ、何言ってるんですか堺さんっ、、」
「何で~?素直にそう思ったから言っただけよ~。」
あっけらかんとそんな事を口にする堺さんにびっくりする。
「だって礼二はただのボディーガードですよ?」
「あら。ボディーガードと恋愛出来ないなんて聞いた事無いわよ私。礼二さんもそうじゃない?」
「聞いた事…無いですね。」
「ほ~ら。」
「ま、まぁそうかもしれないですけど、、」
「あ、そうだ。礼二さんてどういう経緯で高嶺さんの護衛に就き始めたんですか?」
「昔から菊田家は高嶺家に恩がありそういった関係で私は護衛に就かせて頂いています。」
「そうだったんですか。そんな事だとは予想もしていなかったわ。てっきり求人とか知り合いの紹介で…とかそういう感じかなって思ってたわ。わぁ、何だかドラマの世界みたい。」
「確かに現代では余り聞かないかもしれませんね。」
「そっかぁ。あ、もしかして転勤も一緒について行くんですか?」
「はい。」
「ですよね。同じ家に住むの?二人は。」
「違いますよっ!別々です。そうよね?」
「私は雅お嬢様の隣に住まわせて頂く事になっております。」
「え?別々なんだ。護衛だから24時間側に居るものだとばかり。」
堺さんは当然の様な雰囲気でそう言ってくる。
「護衛してもらっててもきちんとプライベートの時間はあるんです私。」
「そっかそっか。そうだよね。礼二さんも24時間じゃ大変だもんね。」
「24時間勤務の様な事もこの間あるにはありましたが。」
「やっぱり大変なんですね。このお仕事。」
「あの時はぐっすり寝ても大丈夫だったのに。だって家、防犯カメラとかセンサーとか沢山付いてるし。あとガラスとかも割れにくいの入ってるし。」
「へぇ~。それだけ完璧なら高嶺さん家に侵入して来る悪党は直ぐに捕まりそうね。」
「ていうか入って来られないですね。そもそも。」
「完璧でも相手の知識が上ならばそんな物は突破出来てしまう可能性はあるので気は抜けないんです。」
礼二がそう言うと堺さんは目を輝かせながら私に。
「礼二さんの仕事に対するその姿勢好きです。高嶺さん幸せ者ね。こんな素敵な人に護衛されてるなんて。」
「え、、あ…はぁ。」
たじろぐ私に礼二が横から。
「私も本当にそう思います。」
意地悪な顔付きでニヤリと笑ってきた。
「は、はい?」
私も負けずにガンを飛ばす。
「あはは!ほらまた良い感じ~。」
「もう本当にからかわないで下さいよっ。礼二、早く注文して!」
「かしこまりました。雅お嬢様の言いつけには何時も従順ですから素敵な私は。ふっ。」
「その嫌味な言い方どうにかしてよ。」
「でもさ、これだけ仲良しならちょっと位お互い意識した事無くは無いんじゃ無い?」
少しの間があって最初に口を開いたのは礼二だった。
「雅お嬢様の存在は私など手が届く訳など無くて…。」
ボソリと呟く様に言ってウーロン茶を口にする。そんな礼二の顔からは感情が読み取れない。そして二人の関係について堺さんの一言一言が私の中で一々引っ掛かってくる。
礼二に対する想いが再びジワリと胸に広がりそうになっていくのを感じた。
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