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並べられた料理に全て箸をつけてお腹に収めると礼二は席を立ちお皿をシンクに運び出した。
「片付け位は自分でやるから。」
礼二の手料理は私好みの味付けでどれもとても美味しかった。だからせめてものお返しがしたくて自ら片付けを申し出た。
「やめとけ。皿が割れたら面倒くさい。大人しく座ってろ。」
けれど礼二は一切やらせてはくれなかった。
「じゃあお皿下げるだけ。」
礼二は返事をせずにコーヒーメーカーに水を入れだした。
「お前は飲まないよな?」
「コーヒーか…飲もうかな。」
「眠れなくなるぞ。」
「あんまりそういう事無いから大丈夫私。毎日ぐっすり眠れるの。」
「悩みなんか無さそうだもんなお前。」
「え?何か棘のある言い方。」
「見たまんまを言っただけだが。だって本当だろ?」
「深刻な悩みは今の所無いけどそれなりになら一応ありますから。」
「へぇ~。一丁前。」
「それより礼二の方こそ眠れなくなるんじゃないの?明日寝不足で私の事護れるの?」
「ショートスリーパーなんだよ俺は。」
「あっ、そっか。だとしても昼間あの秘密の場所で昼寝出来るもんね。そうでしたそうでした。」
「だな。お前の気持ち悪い含み笑いを聞きながらな。」
ムッとした表情を向けた私をかわすようにコーヒーの入ったマグカップを両手に持ちダイニングテーブルに置いた。そして怒っている私の方を見ながら。
「冷めるぞ。早く飲め。」
立ったままコーヒーを飲む礼二はそう言った。
渋々コーヒーを飲みにダイニングテーブルへ戻るとふと気になった事があった。お風呂に入った後なのに部屋着というよりは普段着に近い様な格好をしている礼二に。
「Gパンで過ごしてるの?普段。それとも部屋着忘れたの?」
「忘れてない。」
「じゃあ普段のスタイルなんだそれが。」
「部屋着はある。」
「私に気にせず部屋着でリラックスして良いよ。礼二がどんなの着てるか見てみたい。意外とどっかのキャラクターものとか着てたりして~あはは。」
「なる程。お前は彼氏にそういうのを着て欲しいんだな。良く分かった。」
「別にそんな事言ってません。」
「口にするってのはそうして欲しいの現れだ。」
「だから違うってば。」
「あっそ。」
ズルズルとコーヒーを啜る礼二。
「はぁ~。もういい。」
私は疲れて出されたコーヒーに口を付けた。
「いつでも動ける様にだよ。」
「え?」
「コーヒーもこれも仕事の一つだ。」
着ている服を軽く指差し持っていたマグカップを上げ下げして見せた。
「ショートスリーパーって元々そうじゃ無かったの?」
「元々俺は7時間寝る派だ。だけどボディーガードを仕事にしてから相手の要望に何時でも臨機応変に合わせられる様にしている。コーヒーを飲み2、3時間眠れば目が覚め、体力も回復出来る様に体質改善もした。まぁ今迄24時間の仕事には就いて無かったが。だから今日から1ヶ月間が初の実践って訳だ。」
「そう…だったんだ。もしかして私をいつでも護れるように?」
「それ飲んだら早く寝ろよ。」
「うん…。」
礼二は素直に応えてはくれなかったけれどきっと私が思っている事に間違いは無さそうだった。私は当たり前に側に礼二が居て護ってもらえていたけれど礼二は私を護る為にそんな努力をしていたなんて思わなかったな。
あの礼二が真摯に仕事に取り組んでいる事が分かったそんな夜だった。
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