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オオカミと一匹の子ヤギ
七匹の中で一匹だけ、黒い毛の子がいたの。一番ちいさな子。
私とおんなじ、真っ黒い毛の子。あの女と違う、真っ白の毛。
わかった。わたしのおなかからいなくなった子、きっとあの子だわ。
ああ、きっと迷子になっちゃったんだわ。
わたしが目を離したときに。攫われたのかしら。あの子は優しいから、みんなが寂しがると思って、あの家から出ていけないんだわ。それか、あの女やきょうだいに脅されているんだわ。かわいそうな子。でもやっと見つけた。
大丈夫、お母さんが助けてあげるからね。
あの女が出ていった隙に、お母さんが迎えに行ってあげる。
待っててね、その時が来たら戸を開けて頂戴。
「お母さんはそんなにガラガラ声じゃないよ、おまえはお母さんじゃない」
「お母さんはそんなに黒い毛じゃないよ、おまえはお母さんじゃない」
ああひどい、酷い。わたしは紛れもなくその子のお母さんなのに。
そんなこと言う悪い子たちは飲み込んでしまいましょうね。
ぺろり、ごくん。
あの女とおんなじ、真っ白い毛。
笛のような鳴き声。薄暗い場所でもすぐに見つけられるわ。
ぺろり、ごくん。ぺろり、ごくん。
大丈夫。憎たらしいあの女にそっくりの子達でも、おなかの中でわたしの子に産まれなおしたら、今度はきっとそんな酷いことは言わない子になるわ。
ぺろり、ごくん。ぺろり、ごくん。ぺろり、ごくん。
つやつやの、真っ黒い毛のきょうだいたち。きっと毎日楽しいわ。
あら、あの子はどこに行ったの。もう怖くないわ、あの真っ白の子達はもう一匹もいないの。ベットの下も暖炉の中にもいない。
みんな見つけておなかのなかなのよ。ねぇ、大丈夫よ。他のきょうだいもみんなお揃いになったら、寂しくないでしょう。ほら、おなかのなかで元気に動いてる。大丈夫よ。ね、お母さん、待っているからね。
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