13.SNS

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13.SNS

 洋食亭ゴーストは常連客もつき、SNSでの反響もよかった。お客さんの口コミを見て注文しに来てくれるお客さんが増え、SNSのフォロワーは1000人に達していた。  この頃になると、注文が多すぎると二人では対応しきれなくなったため、先着順で対応し、注文が多いと断るケースも増えてきた。  真冬の厳しい寒さを越え、春一番が吹く3月下旬。光太と零は洋食亭ゴーストのSNSアカウントに書き込まれた一件のコメントを見て、焦りのあまり、顔を見合わせた。  "なんか、手先透けてない?笑"  まさかの出来事だった。一日前に投稿した零の調理風景の写真をよく見ると、たしかに包丁を持つ手先が透けており、包丁が宙を浮いているように見える。これはまずいー。二人は慌てて投稿を削除したが、すでに遅かった。  写真は見知らぬ誰かがすでに保存していたらしく、SNS上で瞬く間に拡散された。  "やばいな!マジなゴーストじゃん!"    "怖すぎなんだけど、食べたら呪われるんじゃない。"  "幽霊?どうなってんの?"  SNS上で拡散された「手が透けた調理写真」は思いもよらぬスピードで人々に広がっていき、テレビ取材や雑誌の取材連絡が入るほどだった。そして、「面白半分」で注文する人が急増したせいでとてもさばききれない数の注文が入り、注文を一時停止せざるを得ない事態になった。  「おいどうしよう…。ここまで拡散されちゃったら、もう止められないよ…。」光太はこの先どうしたらいいのか、途方に暮れていた。  「まずいな…俺が幽霊だったばっかりに。光太ごめんよ。」  「今更そんなこと気にしないでよ。何か方法を考えよう。」    「光太、お前はまだ高校生だから、このままレストランを続けるのはよくないよ。俺はここまでお前とやってこれて満足だから、明日から普通の高校生に戻ってくれ。」  「なに言ってるんだ。レストラン続けるに決まってるじゃないか。明日全部話してくるよ。」  「そんなことしたら、お前の立場が…」  「高校は辞める。それくらい楽しい世界を教えてくれたんだよ、零は。最後まで責任とってよね。」  「バカたれ…」零は椅子に深く腰かけ、下を向き腕組みをしている。その腕には涙を拭った跡がはっきりと見てとれた。
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