怪演！ゴーストレストラン

4.嘘のような本当の話

　家に帰ると、光太がなかなか帰ってこないことを心配した両親がリビングで待っていた。

　「光太、遅いじゃないか！心配したんだぞ。」　父親の広は心配と安堵が入り交じった表情だ。

　「大丈夫だよ。ちょっと友達と話してただけ
。」

　「友達って珍しいわね。もしかして彼女でもできたの？！」
　美和が興味津々に聞いてきた。

　「そんなわけないじゃん。父さんと母さんには関係ないよ。もう寝るね。」
　光太はそう言うと自分の部屋に戻り、ついさっきの出来事をおさらいした。

　「幽霊に会ったなんて、誰も信じてくれないよな…。」
　光太は親にだけでも話そうか悩んだが、到底信じてもらえるとは思えなかった。零と一緒にレストランをやることは考えられなかったので断りたかったが、断ったら呪われるかもしれない。幽霊だから、何をしてくるかわからない。そんなとりとめのない考えが、頭の中をぐるぐると駆け巡る。結局、何の結論もでないままこの日は眠りについた。

　翌日、光太はとても授業に集中できる状態ではなかった。今夜また零と会わなければならない。それまでに返事を考えなければならないのだが、良い答えが思い浮かばない。

　「なるべく零を傷つけずに断るにはどうしたらいいのか…。」
　そんなことを考えていたら、すぐに放課後がやってきてしまった。

　零との約束の時間までしばらく時間があるため、光太はまた昨日と同じ「喫茶ミツイ」に向かった。そこでアイスカフェラテを飲みながら、零とのやり取りを想像していた。やはり、断りづらい。

　「君、昨日も来てくれたね。何か考え事でもしてるのかい？」
　マスターに話しかけられた。自分で考えていただけではどうすれば良いかわからない。光太はいっそのことマスターに相談することにした。
　マスターには昨日の出来事を全て話した。学校での出来事から始まり、店を出た後の零との出会いまで全て話した。話の途中、マスターは相づちを打ちながら、話を遮ることなく最後まで聞いてくれた。

　「しかし、ここに幽霊が来ていたなんて驚きだねぇ…。」
　全て聞き終えたマスターが口を開いた。

　「その子は零くんって名前だよね？覚えているよ。いつもこのカウンター席でコーヒーを飲んでいたからね。」マスターは懐かしい表情で語り始めた。

　「突然来なくなったと思ったら、交通事故に遭っていたなんて…。零くんはね、元気な子で何より夢を語るのが大好きだった。ここでコーヒーを飲みながら、将来はレストランやるんだ！って宣言していたよ。素直でかわいい子だった。」
　マスターは少し間を置いて続けた。

　「零くんは本当に、君と一緒にレストランをやりたいだけだと思うよ。自らと同じ想いを持った人を見つけて、嬉しくなったんだと思う。現実的にはあり得ない話かもしれないけど、俺には零くんがひたむきに夢の実現へと向かいたい様子が想像できるよ。」

　「おっと、俺からはここまでしか言えないな。君はまだ高校生だし、やりなよ！とは言えないからね。ただ、面白い出会いもあるもんだなぁ。」
　マスターはそう言い残すと、厨房へと入っていった。

　「マスター、零のこと知ってたんだ…。」
　光太は零が夢半ばで亡くなってしまったことを想い、心が傷んだ。
　光太は零との約束の時間ぎりぎりまで、店に滞在した。マスターも気にかけてくれていて、余り物で作ったドリアまでご馳走してくれた。
　いよいよ約束の時間だー。光太はアイスカフェラテの代金を支払うと、店を後にした。