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5.やりたい気持ち
光太は昨晩と同じ帰り道をたどって歩いた。そして、歩きながら様々なことを考えた。零への返事次第では今後の生活に大きく関わってくる気がしたからだ。
約束の22時。昨晩零と遭遇したあたり着くと、すでに零は電柱に寄りかかって待っていた。
「お、来てくれたね!ありがとう。来てくれないかと思ってたよ。」
「行くか迷ったし、色々考えたけど、さっき喫茶店のマスターと会ってたんだ。零くん、マスターと結構仲良かったんだね。」
「マスターと話したのか。うん、俺はよくマスターに相談にのってもらってたからね。いつも将来はレストランやりたいんです!って言ってた気がするなぁ。」
「それでね、零くんがレストランをやりたい気持ちもわかったし、僕も将来的にはやりたい。だけどね、僕高校生だから、少し待ってもらえないかな?卒業してからならできる気がするけど…。」
光太は恐る恐る本心を話した。光太は今の高校生活が充実しているとは思っていない。いっそのこと零の話にのって、レストランをやった方が面白いんじゃないかとも思った。しかし、まだ高校生である以上、親や周囲に迷惑がかかるのではないかと考えたのだ。
「そうだよね、ただね、俺の勝手な都合で申し訳ないけど、この世にいられるのはあと1年間だけなんだ。その後は、ずっとあの世で暮らさなければならない。そうなる前に実現させたいんだよなあ。」
零はとても悲しそうな表情を見せた。それを見た光太はとても放ってはおけなかった。
「わかった…わかったよ。レストラン一緒にやろう!だけど、僕は料理が好きとは言っても素人レベルだし、営業に関する知識とか全然ないけど、大丈夫なの?!」
「本当にいいの?!嬉しいよ!!そこら辺は任せて。料理のことは俺がアドバイスできるし、営業の方法とかもプロデュースするよ。」
零は今までで一番の笑顔を見せた。それを見た光太は、なんだか人(幽霊)助けをした気になって嬉しくなった。
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