6.特訓

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6.特訓

 零とレストランをやることになった翌日から、零による料理の「特訓」が始まった。今まで料理は家族に向けて作った経験しかない光太にとって、とても刺激的な内容だった。食材の良さを引き出す味付けの基本から、包丁さばきやきれいな盛り付け方まで教わった。  特訓は毎日学校終わりに行われた。場所は、町で管理されているレンタルスペース「クッチーナ」を借りていた。とても格安で借りられる上にキッチンが付いており、食品営業許可も取得している施設のため、実際にレストランを運営する時もここでやることにした。  この頃の光太の帰宅は毎日21時を過ぎていた。今までは学校が終わると道草もせず帰宅していたため、その変化に広と美和は心配していた。  ある日光太が帰宅した際、広は単刀直入に尋ねた。  「光太、最近帰りが遅いじゃないか。まあ年頃の高校生だからダメとは言わないが、何か学校生活に変化でもあったのか?」  「特に変わったことはないよ。だけどね、今めちゃくちゃ頑張っていることがあるんだ。お父さんたちに言ってもわからないと思うから、ほっといて欲しい。」  「そうか、まあ何かに打ち込むことは良いことだな。今まで光太、そういうこと少なかったから。頑張れよ!」  広はそう言ったものの、内心では今まで何にもあまり興味を示さなかった光太が、何にハマっているのか気になった。もしかして、悪い連中とつるんでいるんじゃないかと心配にもなった。しかし、光太の目を見ると、とても希望に満ち溢れているように見えた。広は親として、ひとまず好きなようにやらせてあげようと考えた。
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