その3

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「いや、仮に恋人じゃなくたってほっとけないだろ」  そう、と言う声が淡くてはかなくて。少なくてもデビューする前までは、晴輝にはそんなことを言ってくれる人はいなかったらしい。これまでの晴輝の人生は、俺なんかが想像できないレベルにつらかったんだろうという、それだけが俺に分かることだ。それが悲しいけど、だけど。 「愛してるんだ、晴輝。とにかくそれは、知ってて欲しい」  少しの間の後、うん、とようやく聞こえる声でうなずく。晴輝の腕がそっと、俺の胸に添えられる。 「あの歌みたいだね」  晴輝のぬくもりのあったかさに眠りに落ちかけていた俺の耳に、ふいに飛びこんでくる声。 「……ん、なに?」  晴輝はもっと俺のぬくもりに身体を埋めるようにした。夜を怖がる子供みたいで、かわいい。 「君のぬくもりは僕の勇気だな、って」  少し明るさを取り戻した、晴輝の声。  それは、俺達がつきあうきっかけになった曲のワンフレーズ。晴輝が俺に告白するために作った曲だ。 「そうだろ、それを忘れないでくれよな」  晴輝は今度はしっかり、うなずいた。 「ありがとう、これからもよろしくな」 「任しとけ」  俺は笑って、晴輝の頭を優しくぽんぽんと撫でた。しっかり抱きついてくる晴輝を抱き直して、目を閉じる。ぬくもりを全身で感じあう。   君のぬくもりは僕の勇気。お互いずっと、そういう存在でいられるように。初めて結ばれた夜にも思ったことを、俺は改めて誓った。                             END
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