25人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「いや、仮に恋人じゃなくたってほっとけないだろ」
そう、と言う声が淡くてはかなくて。少なくてもデビューする前までは、晴輝にはそんなことを言ってくれる人はいなかったらしい。これまでの晴輝の人生は、俺なんかが想像できないレベルにつらかったんだろうという、それだけが俺に分かることだ。それが悲しいけど、だけど。
「愛してるんだ、晴輝。とにかくそれは、知ってて欲しい」
少しの間の後、うん、とようやく聞こえる声でうなずく。晴輝の腕がそっと、俺の胸に添えられる。
「あの歌みたいだね」
晴輝のぬくもりのあったかさに眠りに落ちかけていた俺の耳に、ふいに飛びこんでくる声。
「……ん、なに?」
晴輝はもっと俺のぬくもりに身体を埋めるようにした。夜を怖がる子供みたいで、かわいい。
「君のぬくもりは僕の勇気だな、って」
少し明るさを取り戻した、晴輝の声。
それは、俺達がつきあうきっかけになった曲のワンフレーズ。晴輝が俺に告白するために作った曲だ。
「そうだろ、それを忘れないでくれよな」
晴輝は今度はしっかり、うなずいた。
「ありがとう、これからもよろしくな」
「任しとけ」
俺は笑って、晴輝の頭を優しくぽんぽんと撫でた。しっかり抱きついてくる晴輝を抱き直して、目を閉じる。ぬくもりを全身で感じあう。
君のぬくもりは僕の勇気。お互いずっと、そういう存在でいられるように。初めて結ばれた夜にも思ったことを、俺は改めて誓った。
END
最初のコメントを投稿しよう!