その2

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「あんまり固く考える必要ないと思うけどなあ」  少しあきれたように首をかしげて、餃子の具を入れていた大きなボウルをスポンジでこする隆宣さん。  どうも俺は頭でっかちらしい。隆宣さんに背中を押されることも多い。でも晴輝とのことはちゃんとしたいから、転職しないままの方がいろいろとよかったんじゃないか、とか考えたりもする。 「明日ハルに気分よく仕事してもらうためにも、このまま一緒に帰って部屋でいちゃつけばいいじゃん。デザートってことで」  いかにも経験豊富そうにさらっと言うくせに、隆宣さんは翔一郎さんを知って以来、リアルに知りあう前からずっと、他の相手からのアプローチはみんな蹴ってきたっていうんだから、徹底してるよな。 「なに、俺の話してた?」  いつの間にか、背後に晴輝がいた。洗い物の水音のせいで、全然気づかなかった。 「い、いや、別に」 「ありがとう、もういいよ」  少しあわてて言った俺に、タオルで手を拭きながら隆宣さんが言う。 「じゃ、帰ろうか。俺眠くなってきちゃった」  あくびをして、晴輝が子供みたいに目をこする。  タクシーを呼んでもらい、俺達はまだ餃子のにおいがこもるような二人の新居を後にした。
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