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「俺もだよ。ほら、風邪引くから拭いて」
俺は晴輝の濡れた髪をわしわしと拭いた。もちろん、目が見えなくたって晴輝は自分のことは一通りできるけど、俺といると甘えたがりの子供みたいになる。
「たまに、こういうのもいいかな」
とか言いつつ、本当は入れて欲しかったんじゃないかと思ったけど、気づかないふりをした。これ以上晴輝がやらしくなっちまったら、いろんな意味で俺の身が保たない。今から寝ればまだたっぷり寝れるから、晴輝と二人ゆっくり寝たい。
俺はまた晴輝を誘導して寝室に戻り、置きっぱにしているジャージに着替えた。スマホのアラームも忘れずにセットする。晴輝と一緒にベッドに入り、リモコンで電気を消して腕枕すると、晴輝はしっかり俺に抱きついてきた。
「今はまだ、一緒に住めないとか思ってるでしょ?」
甘い声で、いきなり言う。不意を突かれて、俺はなにも言えなくなる。
「分かるよ、だから泊まれそうなタイミングは逃したくないんだ」
その、いつ捨てられるか分からない、って思ってそうな考えはどこから来るんだ? 俺はまず、腹が立った。
晴輝はまだ俺との関係に不安を感じてるのか? こんな、入れてないけど満たしあえるセックスの後なのに? それとも、お互い満たされてると思ってるのは俺だけなのか?
満たされていた心に、いきなり浴びせられる冷水。血の気までもが、すうっと引いていくような気がした。
「俺のこと、信じてくれてないの?」
自分でもびっくりするような、とがった声が出た。泣きそうな顔で身体を起こす晴輝。
「違う、違うんだ。俺、幸せで……」
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