その1

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 ぎゅっ、と俺を抱きしめる腕に力をこめ、肩に顔を埋めて安心したように息をつく。幸せそうで、愛しくなる。 「俺はしたいです」  ありがたいことに、俺も最近レコーディングや単発のライブとかでわりと忙しくて、翔一郎さんとセックスするのも二週間ぶりぐらいだった。だから正直、きのう一回しただけじゃ足りなくて。でも、翔一郎さんが準備から含めたもろもろがとりあえず終わった安心感と疲れからか、終わったら即寝落ちって感じだったから、我慢した。ただ一緒に寝るのも、幸せには違いないから。 「抱かせて下さい」  髪や背中を撫で、顔のあちこちに口づける。 「えっ、ダメだよそんな……」  翔一郎さんは照れたような顔で俺から離れようとした。 「なにがダメなんです?」  男二人にはちょっと狭い、セミダブルのベッド。翔一郎さんが落ちないようにってのもあって、俺は離れようとする翔一郎さんをしっかり抱き止めた。お互いに仕事柄遅くなることも多いから、寝室は別々にしていて、一緒に寝る時は俺のベッドに入ることが多い。 「いや、その……。またしたら歯止めがきかなくなっちゃうから……」  至近距離で目を伏せ、恥ずかしそうにつぶやく。  出た。この人はそんなこと言いそうにない顔で、無意識に無自覚に俺を煽るエロいことを言うんだもんなあ。 「いいじゃないですか、何回でもしましょう」  俺はいつものポーカーフェイスで、翔一郎さんにキスした。翔一郎さんはキスが好きだ。その気になるように、唇を何度か舌先でなぞってからそろりと舌で唇を割る。ねっとり舌を絡ませあう。 「隆宣……」  色っぽい声で俺を呼んで、翔一郎さんの方からキスしてくる。濃厚な、飢えてるみたいなキス。歯止めがきかなくなっちゃう、という言葉はマジらしい。望むところだ。  翔一郎さんは俺とつきあうまで、かなり長いこと恋人を作らずに来た。口にはしないけど、その分を取り返してるってのはあるかも知れない。  俺は思いっきり、翔一郎さんのぬくもりを貪った。
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