その2

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 ああそうか、そういう相手にひかれたってことでは、俺達は似た者同士か。  俺の肘をつかんでいる晴輝の手を意識しながら、空を仰ぐ。建物に切り取られた、縦長の空。優しく吹き抜けていく秋の風。  俺は隆宣さんの、翔一郎さんと添い遂げる覚悟も聞いてるから、俺にもそんなふうに一途に晴輝だけを見て人生捧げるみたいな、自分の気持ちが一生変わらないことが前提の生き方ができるだろうかと、つい考えちまう。だって相手と別れたとかなにかあった時、どうするんだ? 人生詰んだような気にならないか? しかも俺の場合、仕事もプライベートも一緒だぞ? 「さあ、着いたよ」  二人が住むマンションは、駅から五分歩くかどうかって距離の、商店街を少し入った住宅街にあった。駅近で商店街もすぐなのに静かそうで、よさげだ。 「最近忙しかったから、まだ完全に片づいてなくて。ごめんね」  翔一郎さんがドアを開けると、ふわっといい匂いが漂ってきた。短い廊下の左右それぞれに部屋があって、突き当たりがリビングだ。 「やあ、いらっしゃい」  黒いエプロン姿の隆宣さんが、菜箸を手にリビングから顔をのぞかせた。料理中だからか、長髪を後ろで一つに結んでいる。 「翔一郎さんと言い方がおんなじだね」  俺の肘を引っ張るようにしながら、晴輝がくすくす笑う。なんだか子犬みたいだと、俺は思う。 「今唐揚げ揚げてるから、軽く飲んでから餃子焼こうか」 「やった、楽しみ!」  テーブルにはすでに、彩りも鮮やかなサラダと、ザーサイと鶏肉やネギをあえたもの、それにポテトフライがホットプレートを囲むように置かれていた。俺はテーブルの上の様子を、晴輝に伝える。  十畳以上はありそうなリビングには、まだ少し手つかずの引っ越しの段ボールが隅っこの方に積んである。丈のあってないカーテンは、前の部屋で使ってたヤツだろう。 「うまっ!」  お祝いを渡したりしてから乾杯し、早速鶏の唐揚げに手をつけて、思わず声が出た。生姜がきいていて、柔らかくてジューシーでめちゃくちゃうまい。 「毎日隆宣の料理食べられて、翔一郎さんがうらやましいね」  にこにこしながら晴輝が言うと、翔一郎さんは本当に残念そうな表情になった。
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