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 友達が死んだ。  GWが終わってすぐの、夏のような暑さが何日も続いた日だった。  サッカーの部活中に突然起こった心臓発作。  緑川祐太郎(みどりかわゆうたろう)の人生は、高2になったばっかりの16歳で、終わった。  元気で明るくて、めったに風邪もひかない、健康そのものの体だったのに。  神様なのか悪魔なのか知らないけど、祐太郎の命を奪うなら、俺の命を差し出したのに。  でも、神様も悪魔も杉野(すぎの)も選んだのは祐太郎の方で、俺は選択肢にも入れなかった。  俺がどうあがこうと、祐太郎の代わりになれない事ぐらい分かっている。  分かっているけど、代わりたかった。  祐太郎の居ない世界がこんに虚しいなんて、バカばっかりやってた頃は想像もしなかった。  心のどこかで一人でも平気だと思ってたのに、本当に一人になったら全然平気じゃない。祐太郎のせいで一人が寂しくて仕方ない。  だから、代わりを求めてしまったのかもしれない。  なぁ、祐太郎。どうしてあんなこと言ったんだ。  冗談でも聞きたくなかった。  いや、冗談だから言ったんだよな。  あの頃の馬鹿な話は聞き流していたハズなのに、祐太郎が居なくなった途端、勝手に思い出して意味まで付けた。  もう、この世にいないのに。  もう、会えないのに。  もう、応えてはくれないのに。  なのに、俺は祐太郎にばかり話しかけてしまう。  なぁ、どうしたらいい。  こんな事、祐太郎にしか相談できないんだ。  いや、祐太郎に相談する事じゃ無いよな、絶対。  でも、ゲームをしながら、聞き流してもいいから聞きいてくれ。  俺は恋をしてしまったかもしれない。  祐太郎が言う「恋」はきっとこんな感情の事なんだろ?  大切で、守りたくて、会いたくて、笑顔が見たくて、考えるだけで胸が痛くて切なくて、普通にしてるだけなのに可愛くて、目が離せなくて、触れたくて。  まだまだあるけど、言葉にするのは結構難しい。  なぁ、これが「恋」なら祐太郎はどうする?  笑いながら「祥磨(しょうま)もようやく俺と対等になったか」とでも言って、肩でも組んでウザく絡むか?それとも、見たことが無いくらい真剣な顔で俺を睨んで、大きな声で怒号しながら殴りかかるか?そうじゃなければ、ただ黙って俺の話を聞くだけか。  どれだけ話しかけても、祐太郎の答えは聞こえない。  そんな事、分かってる。  この1年で嫌ってほど実感した。  なぁ、俺は、祐太郎を裏切ってしまったのか?    
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