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「ここか」
そこは和風建築の家と繋がった形のお店で、比較的歴史があるように感じる。
すると、店内から男性が一人出てきた。
「あれ、慧くんじゃないか」
「あ、叔父さん!」
その男性は慧の叔父にあたる渡辺和彌であった。右手には袋を持っている。
「それは…」
「これか?ここで売ってる塩パンだよ。すごく美味しくてね、何回も買いに来てるんだ」
慧は「なるほど…」と呟いた。
「おっと、もう行かなきゃ。それじゃあ、またね」
「はい、また」
慧は渡辺さんと別れ、早速入店した。
「いらっしゃいま…せ」
レジにいたのは、慧と同年代の女性であった。お店自体は小さめだが、品揃えはかなり多い。
「えっと……き、決まったらお伝えください」
「はい、ありがとうございます」
店員の言葉に慧は微笑んで返す。
「……じゃあ、いいですか?」
「は、はい!どうぞ」
「この塩パンを二つ、あとパン・オ・ショコラも二つ、あとは…このクロワッサンとドーナツを一つずつください」
「う……」
慧は声がした方向を見る。店員のペンが動いていなかった。手が震えて、顔色も悪い。
「え、大丈夫ですか?!顔色悪いですよ!」
「へ……?」
「具合悪いなら休みましょう。注文はやめときますから」
「ち、違うんです!」
大人しそうな印象を与えていた店員が大声で叫んだ。
「わ、私……今日、ちゃんとお店番をするのが初めてで、その……いつも手伝ってた時は常連さんとか、会ったことあるお客さんとかばかりだったから……急に知らないお客さんが来て……そ、その、き、緊張しちゃって……」
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